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(1)大腸がん総論~早期発見のために~ 倉敷成人病センター副院長 松本剛昌

まつもと・たかまさ 福山誠之館高、大阪医大卒。津山中央病院、岡山大病院など経て2013年7月から現職。医学博士。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会指導医、日本消化器内視鏡学会専門医など。

表1

図1

 大腸がんの罹患(りかん)数は毎年12万人を超え、胃がん・肺がんと並んでトップ3の座にあり、死因としても肺がん、胃がんに次いで第3位です。1981年、がんがわが国の死亡原因の第1位となり、35年間続いています。このような現状を打破するため、2006年6月、がん対策基本法が成立し、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の実現を目指し「がん対策推進基本計画」が策定されました。

 (1)がんによる死亡者の減少(2)すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上(3)がんになっても安心して暮らせる社会の構築―の三つを全体目標に掲げ、発生予防や検診による早期発見とともに手術・抗がん剤による化学療法・放射線治療による集学的治療の質の向上や、がんと診断された時からの心のケアを含めた全人的な緩和ケアの推進に向け、がん拠点病院と診療所の地域連携により、推進しています。

 そして患者さんとそのご家族に対して、医師や歯科医師以外にも看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、管理栄養士、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士などのさまざまな職種の医療関係者(コメディカル)の協働によるチーム医療が行われています。がん相談支援センターも各拠点病院等に設置され、患者さんやご家族のさまざまな悩みや質問に対応しています。

 大腸がんも、他のがんと同様に、発がん予防とともに早期発見・早期治療が大切です。表1のように、ステージII期までであれば、ほとんどの方が治癒可能です。大腸がんの予防には身体活動や、野菜や果物を十分摂取することが大切です。逆に肥満や、加工肉の取りすぎはリスクを高めます。

 早期発見のための一次検診として、便潜血検査2日法(免疫法)が行われています。異なる2日間の便中の血液の混入具合を調べる検査ですが、検査者全体の約7・1%の方が陽性となり精密検査が行われ、検診受診者1千人に2人くらいの方にがんが発見されています(図1)

 精密検査の方法として、注腸造影や大腸内視鏡検査が行われていますが、高画質のマルチスライスCTを使用した下部消化管CT撮影(CT colonography)や、大腸カプセル内視鏡も一部利用されるようになりました。

 しかし、国は一次検診の受診率を50%以上にすることを目標に掲げていますが、岡山県では現在15%程度でしかありません。

 近年、大腸がんの患者さんは、二極化されてきています。すなわち、大腸内視鏡などで治癒可能な早期がん患者さんと、血便や腹痛や腹満感、排便困難を生じ受診される進行がんの患者さんに大きく二分されます。

 後者の場合には、転移のため手術不能となり、抗がん剤の全身投与や放射線治療が選択されることもあります。抗がん剤、特に分子標的治療薬の開発は目覚ましく、奏功率や生存期間の延長がかなり期待できるようになりましたが、副作用の心配もあり、早期治療に勝るものはありません。早期発見することで、体により負担の少ない治療法を選択することが可能です。

 胃のポリープと違い、大腸のポリープは5ミリを超え、1センチにもなるとがん化する危険性が高くなり、腺腫内がんのうちにがんの芽を摘み取るように内視鏡的にポリペクトミーや粘膜切除、あるいは粘膜下切除することで、大腸がんの発生を防止したり、治癒切除が可能です。

 一次検診やその陽性者の二次検診(精密健診)を、ぜひ行っていただきたいと思います。

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 倉敷成人病センター((電)086―422―2111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年06月01日 更新)

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