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運動器の病気とけが―整形外科の視点から―「手外科」ってなに? 倉敷中央病院整形外科部長 松本泰一

松本泰一整形外科部長

 今回は「手外科」のお話です。以前は「手の外科」といっていました。

 整形外科の大きな分野として脊椎外科、関節外科(主に股関節・膝関節・肩関節など)、そして手外科があります。手外科といってもなかなか一般の方にはなじみがないのですが、簡単にいえばに示した、肘から手指までに何らかの障害や症状のある、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い患者さんが対象です。

 (1)指、手首や肘の骨折、捻挫など「けが」に起因した上肢の症状。疼(とう)痛・しびれや、指や腕が動きにくいといった運動障害(急性期)。

 (2)けがの後ある程度良くなったが、疼痛やしびれが続く、手指、手関節、肘関節が動きにくい、動かすと痛みが出る症状(慢性期)。あるいはリウマチで手指や肘が変形して困っている。肘や手首などのスポーツに起因する障害。

 (3)生まれつき手指や腕といった上肢に先天的な障害がある赤ちゃんや子どもさん。

 (4)上肢だけでなく下腿(かたい)や大腿骨骨折を過去にしたけれどなかなか治らない、膿のような汁がでる時がある(感染性偽関節といいます)―などの症状が継続している患者さん。

 こういった症状をお持ちの方が、私どもが治療している手外科の対象患者さんです。

 手外科の代表的な疾患はたくさんありますので、日本手外科学会ホームページ(http://www.jssh.or.jp/)で「一般の皆様」→「代表的な手外科疾患」を参照していただければと思います(http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/index.html)。

診察/診断

 レントゲン、CT、MRIなどのさまざまな検査機器を駆使し、手外科専門医が症状のあるところを触診し、問題となっている原因が関節にあるのか、筋肉や腱(けん)にあるのか、筋肉を動かす神経にあるのかを診断します。

 1・5テスラ四肢専用MRIも最近導入しましたので、診療に大いに役立っています。例えば母指(親指)の付け根の手首に近いところに疼痛がある場合、舟状骨骨折や偽関節(数カ月から数年前に受傷して骨が癒合していない)をまず疑うのですが、これはレントゲンでは分かりづらく、MRIを早急に撮影し診断に役立てています。

治療

 手の構造は非常に微細で、またその機能は繊細ですので、手術には手術用顕微鏡や拡大鏡を用いた大変細かい手術技術(マイクロサージャリーといいます)を用います。切断された指肢を再接着したり、無くなってしまった部分を他の体の場所から移植して再建したりします。つかむ、握るなど機能的にも、外観や整容的にも心配りをしながら治療にあたります。

 患者さんが困っておられる症状をお聞きして、たとえ元通りにはならなくても、どうすれば使いやすい手になるのか、じっくりと話し合って治療方針を決めるようにしています。

リハビリ

 手術とリハビリは手外科の両輪で、どちらがうまくいかなくても治療成績は満足いくものとなりません。どちらも大変重要です。当院では整形外科専従の作業療法士が7人在籍しており、手外科の術後リハビリに当たっています。毎週金曜日はハンドセラピー実施時に医師とハンドセラピストが話し合いながら治療にあたっています。

 入院期間は、小さな手術は日帰り手術や一泊入院で行いますが、長期のリハビリや数回にわたる手術を要する場合は長期入院を必要とします。

◆  ◇

 手指・母指・手関節・肘関節など上肢の痛み・動きにくさ・しびれ、また変形、拘縮などの機能障害をお持ちの患者さん、四肢先天性障害があるお子さま、あるいは骨折後に骨癒合していない患者さんなど、一度専門医に相談されてはいかがでしょうか。

 ◇ 

 倉敷中央病院((電)086―422―0210)


 まつもと・たいいち 兵庫県・六甲学院高、愛媛大医学部卒。京都大病院、倉敷中央病院、大手前整肢学園、公立豊岡病院、京都大整形外科を経て2005年より倉敷中央病院勤務。10年米コロンビア大(手外科/マイクロサージャリー=微小外科)留学。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年08月03日 更新)

タグ: 健康倉敷中央病院

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