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「患者や家族との対話大切」 松岡良明賞受賞の倉敷中央病院 小笠原院長に聞く

松岡良明賞を受賞した倉敷中央病院の小笠原院長

 2013年に肺(214件)、胃(184件)、大腸(262件)、前立腺(128件)の各がんで手術数が中四国トップを記録するなど屈指の診断・治療実績を誇る倉敷中央病院(倉敷市美和)が、がん撲滅に貢献した個人、団体をたたえる山陽新聞社会事業団の第20回「松岡良明賞」を受賞した。小笠原敬三院長に、がん診療への意気込みを聞いた。

 ―がん診療に携わる上で大切にしていることは。

 「患者や家族との対話だ。例えば告知にしても、患者の感じ方や事情は一人一人異なる。医療者側が、まず親身に対話する姿勢を持たなければ」

 ―がんは本人にとって大変な事態。治療に向け生活も一変する。

 「仕事に家事、それに費用…。患者それぞれに立場や事情がある。家族の世話を代わる者がいないからと来院が遅れ、乳がんなどが進行してしまった女性に出会ったりすると、医師として本当に残念だ」

 ―倉敷中央病院はがん患者らの悩みを聞くがん相談支援センターを設けている。

 「そう。それと、当院にはがん看護外来がある。病状や治療、副作用、療養生活などについて、専門・認定看護師らが患者や家族の思いや悩みを聞き、一緒に考えている」

 ―がんの診断、治療成績などをデータベース化するがん登録の件数でも倉敷中央病院は抜きんでている。

 「がん診療連携拠点病院の一つとして積極的に取り組んできた。だが、現行のシステムでは協力医療機関が限られるため、個々の病院が頑張っても全国のがん患者全てを把握できるわけではない。やっと制度が整い、来年から全がん患者を登録しようという仕組みがスタートする。がんの罹(り)患者数や生存率が、推計値でなく実数でつかめるようになる。期待している」

 ―医師をはじめ優秀な医療従事者の確保について一言。

 「スカウトやトレードの考え方は駄目。育てていく姿勢が大切だ。若い医師が当院で十分な指導を受け、知識や技術をしっかり学べれば勤務してよかったと思ってくれる。その後都会の病院などでさらに経験を積み、真に優秀な医師として帰ってきてくれるならうれしい」

 ―肺がん治療などに関し、最近の明るい話題は。

 「胸腔(くう)鏡や腹腔鏡による鏡視下手術の発展だ。身体的負担が少なく、高齢でも胸腔鏡で肺がんの手術ができるようになった。当院でも昨年、80歳以上の30人に手術を行った」

 ―がん検診にも力を入れている。

 「早期発見、早期治療は大切だが、がんにならないための一次予防が重要。例えば胃がんとピロリ菌の関連ははっきりしている。であれば、ピロリ菌にはきちんと対処してほしい。それにたばこは絶対いけない」

 ―今後について。

 「今夏、横断的・集学的ながん診療に向けてオンコロジーセンターを設立し、また臨床腫瘍外来を立ち上げた。検査や診断、治療の迅速化で一人でも多くの患者を救いたい。診療の効率化は医師らの負担軽減にもつながる。その分、患者との対話により時間をかけてくれれば、などと思っている」

 倉敷中央病院 1923年、倉敷紡績社長大原孫三郎により倉紡中央病院として創設。27年、倉敷中央病院に改称。医師457人、看護師1269人など職員総数2930人(今年1月1日現在)。病床数1161床。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年09月25日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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