- ホーム
- 特集・話題
- 高度医療で地域を支える
- (5)胆膵内視鏡による診断と治療 津山中央病院内科部長 柘野浩史
(5)胆膵内視鏡による診断と治療 津山中央病院内科部長 柘野浩史
柘野浩史内科部長
上から図1、図2 【図1】超音波内視鏡下吸引生検(EUS―FNA)の穿刺時の超音波画像。腫瘍内に穿刺針が見える【図2】穿刺用超音波内視鏡スコープ先端と穿刺針
上から図3、図4 【図3】内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD)実施時の拡張したバルーン【図4】内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD)実施時のX線画像
▼膵胆道腫瘍に対する診断と治療
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、超音波内視鏡下吸引生検(EUS―FNA)、管腔(くう)内超音波内視鏡検査(IDUS)などを駆使して膵胆道腫瘍の正確な診断と病変範囲を確定します。
2012年から導入した超音波内視鏡下吸引生検(EUS―FNA)では、胃や十二指腸内から超音波で膵胆道腫瘍を確認しながら針を刺し、細胞を採取して診断します(図1、2)。一泊二日の入院で安全に実施されます。診断率も90%と高く、膵体尾部がんの診断には第一選択の検査です。この地域で超音波内視鏡を保有するのは当院だけなので、近隣の医療機関からもご紹介をいただいております。
また、閉塞性黄疸(だん)を伴う場合には、迅速な減黄ドレナージを実施し、さらに手術をしない場合には、太い胆管金属ステントを内視鏡的に留置(EMS)します。超音波内視鏡下胆管ドレナージ(EUS―BD)という方法もありますが、他施設では重篤な合併症の報告があるため、岡山大消化器内科から指導を仰ぎながら、慎重に適応を考えて実施しています。
▼総胆管結石(化膿性胆管炎、胆石性膵炎)の治療
この地域に多い総胆管結石は良性の疾患ですが、これで引き起こされる化膿性胆管炎や胆石性膵炎は、対応が遅れて重篤化すると死に至る恐ろしい病気です。近隣の病院から速やかに紹介いただくためか、ほぼ100%救命しています。
また、総胆管結石の根本的な治療は結石の除去で、胆管出口の十二指腸乳頭部を切開(内視鏡的乳頭括約筋切開術=EST)、あるいはバルーンで拡張(内視鏡的乳頭バルーン拡張術=EPBD)し、胆管内の結石を取り出します。
最近は、大きなバルーンで拡張する方法(内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術=EPLBD)を安全に注意して導入しています(図3、4)。これは、一度に大きな結石を大量に取り出せるために、入院期間が短縮され、早期離床が必要な高齢者には有利な方法と考えます。
当院では、以前は夜間緊急時でもガイドラインに沿って一気に結石を除去していました。しかし、深夜に救急搬送される患者さんは胆管炎や膵炎で体調が悪く、当院の夜間救急外来の混雑で看護師や技師も慌ただしいため、不測の事態を考慮して院内で協議した結果、原則として夜間緊急時は応急処置として短時間(平均20分)で胆管チューブステントを留置(内視鏡的胆管ステント留置術=EBS)し、胆管炎や膵炎の治療を開始後、後日結石を除去しています。結石除去はEPLBD法でも約40分程度は必要なため、重篤な持病などで困難な患者さんは、ステントを留置したまま経過をみています。
長期間ステント留置や結石再発時には、胆管炎が1~2年後に再発することがあり、高熱や腹痛などが出現した場合には速やかに受診をするように、ご家族や紹介元の病院、介護施設によく説明させていただいております。このため胆管炎再発時には速やかに受診され、全例安全に再治療され、手遅れになったことはありません。これは、この地域の皆さまの協力と連携に支えられた結果で、特筆すべき事だと思います。
当院がカバーする医療圏では、90歳を超える患者さんも多数おられ、診療ガイドラインがまだ想定していないような超高齢者にも、苦慮しながら対応しています。また、前述のように、当院だけで地域を支えることは不可能で、地域全体で支えていただいている結果が現在の状態です。当地は「津山モデル」とも言ってよいくらい、高齢化先進地かもしれません。今後とも地域医療機関との連携を深めていきたいと思います。
◇
津山中央病院(0868―21―8111)
つげの・ひろふみ 広島大付属高、大分医科大医学部卒。国立岩国病院、岡山大第一内科、川崎医大川崎病院、岡山大三朝医療センターなど経て2003年から津山中央病院勤務。医学博士。日本内科学会指導医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・認定専門医・評議員。
(2015年10月05日 更新)
タグ:
津山中央病院