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岡山大 84歳にカテーテル治療 心臓壁穴ふさぐ 世界最高齢の成功

すっかり元気になった山本さん(左)と治療を担当した赤木助教授

 岡山大病院(岡山市鹿田町)は、心臓内部の壁に穴があく「心房中隔欠損症」の八十四歳女性に対するカテーテル治療に成功した。一時は重篤な状態だった女性は、日常生活ができるまで回復。この治療の成功例としては世界最高齢で、米国カテーテル治療学会誌の十月号で発表した。

 患者は、瀬戸内市邑久町山田庄の山本幸子さん。一月中旬、自宅で倒れ、呼吸停止状態で岡山赤十字病院(岡山市青江)に運ばれた。先天性の心房中隔欠損症が引き起こした重度の心不全で、救命には成功したが、危険な状態が続いた。

 数日後に転院した岡山大病院では、赤木禎治助教授(循環器疾患治療部)、先天性心疾患が専門の大月審一講師(小児科)らが担当。直径約二ミリのカテーテル(管)を足の付け根の静脈から挿入し心臓に到達させた後、先端部に取り付けた閉鎖栓(特殊な形状記憶合金と布製)を傘のように開き、約二・五センチの穴をふさいだ。

 翌日には人工呼吸器が外れ、一カ月後には歩いて退院するなど劇的に改善。現在はカラオケにも行くほどで、山本さんは「先生のおかげでもう一度命をもらった。恩返しのためにも百歳を目標に頑張りたい」と喜ぶ。

 赤木助教授によると、これまでの最高齢は海外の八十二歳で、予後は良くなかったという。今回は世界的にみても極めて貴重な症例として、岡山赤十字病院循環器科の佐藤哲也医師とともに学会誌に報告した。

 赤木助教授は「高齢者にも適応可能なことを示せた。今後も積極的に取り組みたい」としている。


ズーム

 心房中隔欠損症 左右の心房を仕切る壁の穴から血液が漏れ、心臓から肺に流れる血液が増加。肺に血液がたまり、息切れや呼吸困難を起こす。成人の先天性心疾患の半数を占める。従来は心臓をいったん止めて行う外科手術しか治療法がなく、体力がない高齢者は治療できないまま亡くなるケースがあった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年10月29日 更新)

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