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大腸がんの便潜血検査と内視鏡

外科医師
勝部 亮一
2004年に岡山大学医学部卒業後、倉敷成人病センター、中国中央病院、岡山大学病院消化器外科勤務などを経て、2015年10月より天和会松田病院外科勤務。消化器外科専門医、消化器内視鏡専門医、外科専門医。

図1・ポリープ

図2・早期大腸がん

図3・進行大腸がん

 主に消化管疾患(食道・胃・大腸・小腸など)を中心に担当させていただいております。今回は大腸がんの検査について紹介したいと思います。

 大腸の病気の中でみなさんが一番心配されるのは大腸がんだと思います。食生活の欧米化に伴って大腸がんにかかる患者さんの数も増えてきています。以前と比べると新しい抗がん剤も使用できるようになり、その治療成績は良くなってきておりますが、やはり重要なことは早期発見ということになります。

 大腸がんのスクリーニング検査では便潜血反応を調べます。2日間行った方が1日よりも大腸がんの検出率が高くなるため、一般的には2日法で行われています。便潜血反応が陽性の人に大腸がんが見つかる確率は3%程度で、30~40%の方は何も見つからない(偽陽性)とも言われており、「1回は陽性だったけど1回は陰性なので、症状もないし内視鏡はしなくてもいいですよね?」と質問されることもしばしばあります。

 しかし、便潜血反応はあくまで検査のきっかけとなるもので、それだけで病気があるかどうかわかるものではありません。下の写真は便潜血反応陽性を契機に発見されたポリープ(図1)、早期大腸がん(図2)、進行大腸がん(図3)です。ポリープや早期大腸がんであれば内視鏡で切除できる場合があり、また内視鏡で切除できない場合でも根治手術(きれいに取きれる手術)ができる可能性が高くなります。大腸がんやポリープ以外にも潰瘍性大腸炎・クローン病・虚血性腸炎・大腸憩室・痔などで便潜血陽性となる可能性があります。

 また、偽陰性といって実際には病気があるのに便潜血反応は陰性に出てしまうこともあります。進行がんであっても、約30%の人は偽陰性になるとも言われています。「だったら便潜血反応が陰性でも安心できない、検査の意味がないんじゃないの?」という疑問もあるでしょう。ただ、検診として全員に大腸内視鏡検査をすることは現実的ではありません。はじめから内視鏡検査しかないとなると、費用も高くなり大変そうだからと検診を受けなくなる人が増えてしまいます。精密検査をするかどうかのふるい分けという点では、簡便さ・費用・侵襲性などの点で優れており、現時点ではスクリーニングとしては妥当と考えられています。

 以上のように、検診での便潜血検査はあくまで精密検査をした方がよい人を見つけるための検査です。1回でも陽性の人は是非大腸内視鏡検査を受けてください。また、陰性であっても腹痛・便秘・下痢・血便などお腹の症状が続いている人、時々でも症状があり気になる人も一度大腸内視鏡検査を受けてみてください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年02月12日 更新)

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