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岡山でPEG・栄養研究会 胃ろう管理とリハビリ紹介 口腔ケアで嚥下障害改善

胃ろうの管理と造設後のリハビリについての講演があった岡山PEG・栄養研究会

 脳卒中などで食事をのみ込む嚥下(えんげ)が衰えた人の腹部に小さな穴を開け、胃に栄養を送る「胃ろう」。鼻から栄養チューブを入れるより苦痛が少なく、5~10分で造設できる内視鏡手術・PEGの普及で一般的な医療になった。岡山市内であった第3回岡山PEG・栄養研究会では、在宅患者にも増える胃ろうの管理や造設後の嚥下リハビリについて、先進的取り組みが紹介され、岡山県内の医療関係者約500人が聴き入った。

 いったん胃ろうをつくっても、リハビリで再び口から食べられるようになれば外せる。川崎医大病院(倉敷市松島)の椿原彰夫教授(リハビリテーション科)は「PEG後の嚥下リハビリテーション」と題し講演。その方法を語った。

 リハビリの基本は、歯磨きなどで口の中をきれいにする口腔(こうくう)ケアと、栄養改善で食べる体力を回復させること。特に口腔ケアは、口の中の菌が食物とともに誤って肺に入り起きる誤嚥性肺炎を防ぐ。その上で、食べられる食品や姿勢を検査しながら、摂食訓練などを重ねる。

 「嚥下障害が完治することは少ないが、食品や姿勢、介護方法を工夫することで障害の程度は改善する」と椿原教授。具体的には、座るより体を倒した姿勢の方が誤嚥は少なく、訓練では徐々に体を起こしていく。その際、枕を高くして首を倒すと、のみこみやすくなる。食品は、液体より誤嚥しにくいゼリー状から固形物に変えていく。

 こうしたリハビリを行う同病院ではPEG後の患者の一年生存率が86%。他の報告より高いという。「退院後も口腔ケアを続け体力を保った効果。口から全部食べられなくても、胃ろうで栄養を補給して、少しでも食べることが生きがいにつながる」と強調した。

 PEGは造設、管理が容易とされるが、合併症もある。胃ろうに詳しい「ふきあげ内科胃腸科クリニック」(名古屋市)の蟹江治郎院長は講演で、胃ろう安定後の「後期合併症」として、胃ろう個所からの栄養剤漏れや嘔吐(おうと)回数の増加、下痢を挙げた。

 その対処として、液体の栄養剤を寒天で固形化する方法を紹介。「栄養剤の流動性が減ることで食道へ逆流しにくく、胃の中に残る時間も長くなり、嘔吐や下痢が起こりづらい」と効果を語った。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年05月08日 更新)

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