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手術ロボ「ダ・ビンチ」活用進む 岡山大病院で実績600件超

岡山大病院が導入している手術支援ロボット「ダ・ビンチ」。左奥の操作台に座った医師が、手前に見える鉗子付きアームを遠隔操作する

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で、6年余り前に導入した手術支援ロボット「ダ・ビンチ」の活用が進み、稼働実績が600件を超えた。大半を占める前立腺がんの全摘出手術は、中四国地方で最多を誇る。一方で対象手術のさらなる拡大が課題となっている。

 「思った以上に術後にしんどくなかった。性機能が温存され、心配した尿失禁も起きず、今は趣味のゴルフを楽しめる」。2013年に同病院でダ・ビンチによる前立腺がん手術を受けた赤磐市の男性(71)は笑顔を見せる。

 ダ・ビンチは、09年11月に国が医療機器として認可した米国製ロボット。体表に開けた小さな穴からおなかにカメラを入れ、映像を確認しながら手を動かす腹腔(ふくくう)鏡手術の発展型で、アームの先に取り付けた鉗子(かんし)は複雑で緻密な動きができる。

 岡山大病院は10年8月に岡山県内で最初に導入した。細かく高度な技術が求められる前立腺がんの全摘出手術に使い始め、12年4月に保険適用された後は症例が急増。現在は全ての前立腺がん手術をカバーしている。手術の際神経を温存する措置もしやすく、開腹手術で課題だった術後の尿失禁や性機能障害が起きにくくなったという。

 ただ、保険が適用されるのは前立腺がん手術と、腎がんの部分切除だけ。岡山大病院では、今年9月末までに行った計616件のダ・ビンチ手術のうち、9割以上に当たる569件を両がんの手術(前立腺531件、腎臓38件)が占めた。

 他に、体内で病気の腎臓を切り取り別の場所に移植する「自家腎移植」や胃がん、子宮頸(けい)がん手術などの症例もあるが、いずれも数件~数十件で足踏みしている。

 ダ・ビンチ手術の一段の普及に向けては、1台約2億~3億円と高額な導入費や年1千万円以上とされる維持費がネック。県内で同手術を行うのは、他を含めて4病院にとどまる。岡山大病院で手掛ける荒木元朗講師(泌尿器科)は「患者にとってメリットが大きく、実績を着実に重ね保険適用の拡大を目指したい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月30日 更新)

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