文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 脳卒中の兆候、対処法 突然の片側まひに注意 川崎医大・木村教授 症状回復しても受診を

脳卒中の兆候、対処法 突然の片側まひに注意 川崎医大・木村教授 症状回復しても受診を

木村和美教授

 日本人の死因でがん、心臓病に次ぎ多く、年13万人が亡くなる脳卒中。命を取り留めても、患者の半数近くは寝たきりなどの重い後遺症を抱えるという。治療のポイントは、いかに早く発症に気づくかだ。厚生労働省研究班で脳梗塞(こうそく)患者の救急搬送を実態調査する川崎医大病院(倉敷市松島)の木村和美教授(脳卒中科)に発症の兆候、対処法などを解説してもらう。

 脳卒中は血管が詰まる脳梗塞と脳内部の血管が破れる脳出血、脳表面の動脈にできたこぶが破裂するくも膜下出血に分かれる。中でも患者の六割を占める脳梗塞は、血管に詰まった血の塊を溶かす薬・tPAが知られている。二〇〇五年、健康保険が適用され治療効果を挙げている。

 ただ、tPAの使用は発症三時間以内に限られるだけに、発症後の早急な受診が欠かせない。これまでに中四国の医療機関で最多の五十人に投与した川崎医大病院でも、三時間以内に受診するのは患者の三割程度。脳出血と、くも膜下出血も時間がたつと脳の損傷が広まるため、やはり一刻も早い治療が重要だ。

 木村教授によると、脳卒中の主な症状は、手足や顔のまひ、しびれ▽ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない▽片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける▽力はあるのに立てない、歩けない、フラフラする▽経験したことのない激しい頭痛がする―など。

 「症状が突然起きるのが脳卒中の特徴。例えば、くも膜下出血は頭痛持ちでない人が急に激しい頭痛を訴える」と木村教授。また、「症状で最も多い手足や顔のまひは、左右どちらかの側だけに起きる」と解説する。

 症状を見極める参考になるのが、同病院が作成した「倉敷病院前脳卒中スケール(KPSS)」。脳卒中の重症度を五項目十三点満点で判定する。〇五年から倉敷市消防局の救急隊員が携帯し、同病院に患者を搬送する際に使っている。病院側は受け入れ態勢を整えられ処置の迅速化に役立つため、全国の消防関係機関で広がる動きをみせている。

 発症した際、患者の周りにいた人はどう対応したらいいのか。「マイカーやタクシーは使わず、救急車を呼び専門病院へ向かってほしい」と木村教授。岡山県内の専門病院は岡山脳卒中協会岡山県支部のホームページで紹介している。

 患者は嘔吐(おうと)することが多い。吐いた物を気管に詰まらせ窒息しないよう救急車到着までは横向きに寝かせる。まひがある場合は、まひした側を上にする。ベルトやネクタイは緩め安静にする。

 症状が回復しても様子を見るのは禁物。一時的に血管が詰まる一過性脳虚血発作の大半は一時間以内で治まるが、治療せず放っておくと多くが脳梗塞を発症するという。

 日ごろの備えも大切。脳卒中の恐れが高いのは糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、不整脈などの患者。また、脳梗塞は一度治癒しても再発率が年5%に上る。木村教授は「脳梗塞や脳出血は高齢者に多く、七割が自宅で発症している」と指摘する。

 普段からの健康管理とともに、いざというときにはどうするか、家族で話し合っておくことも大切なようだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月18日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ