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早期胃がん治療の現場紹介 岡山済生会総合病院内視鏡センター 石山修平医長 普及進む「ESD」 内視鏡使いナイフで切除

早期胃がんの内視鏡手術を行う石山医長

 早期胃がんの治療で、開腹せず口から内視鏡を差し込み、特殊なナイフで病巣を切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術」(ESD)。患者の苦痛が少なく、体の負担も軽いことから普及が進む治療現場を、「がん征圧月間」(9月)にちなみ、岡山済生会総合病院(岡山市伊福町)内視鏡センターの石山修平医長(内科)に紹介してもらう。

 三層構造の胃壁のうち、二層目の粘膜下層までにがんがとどまるのが早期胃がん。中でも内視鏡手術の対象は原則、一層目の粘膜層だけに病巣がある場合。「リンパ管の通る粘膜下層にがんが達すると、リンパの流れに乗り転移している可能性が高い」ためだ。

 内視鏡手術で一九八〇年代半ばから行われているのが「内視鏡的粘膜切除術」(EMR)。内視鏡の先端についた輪状のワイヤをがんに引っ掛け絞るように焼き切るが、がんが大きいと切除しきれない。日本胃がん学会のガイドラインでは、適応対象はがんの大きさが二センチまで。これを超えると、おなかに穴を開け内視鏡や手術器具を入れる腹腔(ふくくう)鏡手術か開腹手術で胃を部分切除していた。

 これに対し、二〇〇〇年以降に国内で始まったESDは内視鏡先端のナイフでがんの周囲を切開し、粘膜下層ごと病巣をはがし取る。通常は一時間前後で終わる。がんと正常細胞の見分けがつきにくくなる胃かいようを過去に患っていなければ、がんの大きさにかかわらず手術が可能だ。石山医長は八センチのがんを切除した経験があり、「胃かいようの病歴があっても三センチまでのがんなら適応できる」と話す。

 同病院はESDを本格導入した二〇〇三年以降、胃がんの内視鏡手術が年八十~九十例と、従来の倍以上に増加。今年六月までに計二百八十七例を実施している。術後の病理検査でがんを取り切れたと判断できた患者がその後、がんが再発、転移し亡くなったという例はないという。

 入院は通常六日間。腹腔鏡や開腹手術の十日~二週間より短く、手術の後遺症は軽い。「治療の確実性も高まった」と石山医長。EMRは15%の症例でがんの取り残しがあり治療をやり直していたが、ESDは手技が安定した最近二年間、取り残しがないという。

 ESDには昨年春、公的医療保険が適用され、「切除後の組織が三センチ以上」の胃がんに行うと、医療機関は従来のほぼ倍の診療報酬を得られるようになり、普及の一因となった。食道がんや大腸がんでも始まっている。

 ただ、石山医長は「ESDの対象となる早期胃がんの五年生存率は、開腹手術なら百パーセントに近い。内視鏡手術で根治性を損なっては元も子もない」とも指摘。「(全摘出などの)通常の手術と違い、がんのリスクがある胃がそのまま残る。(ESDによる治療を行った人は)手術後、五年間は最低でも年一回は検査を受けてほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月22日 更新)

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