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岡山、広島、香川「セカンドオピニオン」拡大 最適治療求め主治医以外から意見 医療の質向上へ期待

セカンドオピニオン外来を訪れた患者から話を聞く医師。データなどを基に新たな治療法を提示する=岡山大病院

 診断や治療について患者が主治医以外の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン(第2の意見)」の専門外来を開設する病院が岡山、広島、香川県内で増えている。手術や薬の進歩によって多様な治療を選ぶ機会が増え、患者の選択を手助けするのが目的だ。医師側の“技量”が問われる制度でもあり、「医療の質」向上につながる取り組みとしても注目される。

 「足を切断するしかないといわれました。ほかに治療法はないですか」

 岡山大病院(岡山市鹿田町)の「セカンドオピニオン外来」を訪れた兵庫県の八十代女性が、こう切り出した。女性は、がんの一種の肉腫が足にできていた。

 相談に応じた同大整形外科の尾崎敏文教授は、主治医から提供されたエックス線フィルムや治療経過の資料などを確認。「切断することなく、手術で肉腫を切除した後で、皮膚や筋肉を移植する方法でも治療できる」と助言した。

 「足を切断したら日々の生活ができない。別の選択肢が見つかってよかった」。女性は満足そうに話したという。

 同病院のセカンドオピニオン外来は、四十一の診療科のほぼすべてを対象に医師・歯科医師計八十九人が担当。二〇〇六年二月の開設から今年八月末までの一年半に百九十三件の相談があり、森田潔病院長は「反響は大きく、がんなどの分野への相談が多い」と話す。

過誤への不安

 セカンドオピニオンの専門外来は、岡山県内では岡山済生会総合病院(岡山市)の〇五年ごろから開設するところが目立ち始め、国立病院機構岡山医療センター(岡山市)、倉敷中央病院(倉敷市)、津山中央病院(津山市)などが設置。

 広島県内では福山市民病院(福山市)や広島大病院(広島市)、香川県内では県立中央病院(高松市)や香川大病院(三木町)などに広がる。

 普及の背景には、がんなどの病気に対し、納得のいく治療を求めて意見を聞きたいという患者の要望や、医療過誤への不安がある。

 国も制度面で普及を後押し。〇六年四月から、主治医が検査データなどの診療情報を別の医師に対して提供する場合、診療報酬の対象とした。これにより医師から受診機会を積極的に提起できるようになった。

問われる技量

 セカンドオピニオンは新たな検査や治療は行わず、これまでの治療データの範囲で判断を下すのが原則とされる。限られたデータから患者に最適な選択肢を導き出すには、経験や知識が求められる。

 「われわれ医師側の技量が問われる制度」。岡山済生会総合病院でセカンドオピニオンを担当する脳神経外科の坪井雅弘診療部長はこう位置付け、「自らの技術を高めなければ、患者のニーズに対応できない。そうした取り組みが医療の質向上につながる」と話す。

 主治医の意見と別の医師の意見のどちらにするかは患者が決めなければならず、患者の自己決定の重要性も増してくる。

 岡山医療センターの青山興司院長は「最初から転院目的で受診するなど制度を誤解している人もおり、まだ十分浸透しているとはいえない。だが、患者が知る権利を主張できる最も良い方法であり、今後も広がっていくだろう」と話している。


ズーム

 セカンドオピニオン 1970年代の米国で、保険会社が医療費の節減を図るため、手術の必要性について別の医師の見解を要求するようになったのが始まり。80年代以降、患者の自己決定権や医療の透明性の観点から評価され、その後日本でも広まった。専門外来は主治医の紹介状が必要。全額自己負担で、料金は30分数千円から2万円程度まで幅がある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月25日 更新)

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