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(7)認知症介護のストレスと対応 万成病院併設介護老人保健施設・岡山リハビリテーションホーム介護係長 宇田昭人

岡山リハビリテーションホームの家族会。敬老会などの施設行事に合わせ、年に2回開催。毎回50人前後が参加し、医師による認知症などの講義があったり、家族同士で情報交換などしている

宇田昭人岡山リハビリテーションホーム介護係長

 「同じ事を何回も聞き怒り出す」「鍋を焦がしてボヤになりかける」「外出して迷子になる」「夜中に起きて大声を出す」…。

 認知症の方のケアで心身とも困憊(こんぱい)している家族も多いのではないでしょうか。

専門職でも大変

 介護保険制度が始まって16年が経過した現在、国内には軽度認知障害を含めると、800万人以上の方々が認知症や物忘れと向き合い生活されています。高齢者の認知症に加え、若年性の認知症も深刻な問題になっています。好き好んで認知症になる方はおられません。一度きりの尊い人生を「その人らしく」生活することが重要で、そういう方々に寄り添い、支援していくことを担うのが介護職だと思っています。

 しかし現状は「介護」という専門職を目指していた多くの人々も過密な労働や勤務形態、過剰なストレスによりバーンアウトしてしまう現状も多くみられます。同様に介護職の賃金の安さから、志はありながら生活のために職を辞める人も多く、人員不足はどこの事業所にとっても頭を悩ませる問題になっています。

「やりがい」と「切り換え」

 「介護」という仕事を長く続けるためには、正しい知識を身につけ、認知症を理解し、日々の介護から受けるストレスをコントロールすることが重要だと思います。

 仕事にやりがいを感じながら働くことも大切です。日々の関わりの中で利用者の方からかけられる「ありがとう」という言葉に大きな喜びや、やりがいを感じながら働いている介護職員が多いことも事実です。

 ストレスをうまくコントロールするには、「やりがい」や「楽しさ」を実感しながら利用者の方と関わり、そして勤務を終えた後は気持ちを切り換え、仕事モードのスイッチを「OFF」にしてプライベートの時間を楽しみ、新たな気持ちで業務に向かう準備をすることが大切でしょう。

抱え込まない

 在宅介護でもストレスコントロールや疲労をため込まないことが求められます。在宅介護で重要なのは、まず認知症をしっかり理解し向き合うこと。個人や少数の家族で問題を抱え込まず、なるべく多くの方々で要介護者を支えていくという環境を整備すること。気軽にいろいろな悩みを相談できる方を多く作ることが大切です。

 在宅介護は24時間365日続きます。この先の見えない介護のため疲労やストレスは蓄積していきます。日々の介護という課題を決して家族だけのものとして考えず、在宅サービス等の社会資源を上手に活用していただきたいと思います。

介護サービスの利用

 住み慣れた地域で高齢者が安心して生活を送れる環境を作る、地域で高齢者を支えるためにいろいろな介護サービスを利用して、介護する方々も楽しんで熱中できる趣味や時間を定期的に作り、疲労回復やストレス発散につなげることが大切です。最後まで在宅で介護をしたい気持ちは本当に素晴らしいことですし、介護を受ける方にとってもうれしいことでしょう。

 施設への入所、施設での生活を考えると不安になることも分かりますが、現在の施設には専門職が充実し、その方々にあったきめ細かな個別ケアが受けられます。また、医師、看護師も常駐しているところもあり、家庭では難しい医学管理の下、ケアが提供できるということも大きな魅力だと思います。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 うだ・あきひと 1994年4月、万成病院併設介護老人保健施設岡山リハビリテーションホームに入職。介護福祉士、介護支援専門員資格を取得後、2004年4月から現職。真庭市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月20日 更新)

タグ: 脳・神経介護万成病院

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