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医師が介護する側される側体験 岡山県医師会が講座、双方の気持ち体感

体にまひがある人を風呂に入れる想定で練習。わずかな動きの違いで、介護される側の体が不安定になるため、医師たちは四苦八苦していた

要介護者の体重移動を利用して、負担が少なく移動させる方法を練習。旭川荘療育医療センター(岡山市)の横山正司医師は「周囲の介護スタッフを見て大変さは理解していたつもりだが、実際にやってみるのは思った以上に難しい」

体を無理やり引き上げるなど、やってはいけない介助方法も体験。永瀬内科医院(岡山市)の永瀬亮副院長は「慣れない介護は、するのもされるのも怖いという感覚を味わった。いつでも介護士が身近にいるわけではないので、医師にも知識が必要だ」と話した

体にまひがある人の寝返り介助について、上野代表(手前)から指導を受ける医師たち

紙おむつを着けて講義を受ける医師たち。「排せつにも挑戦して」という条件だったが、小谷医院(和気町)の小谷重光院長は「やろうとしたが、心理的な抵抗感が強くて無理だった。患者さんが嫌がる気持ちが分かる」

 岡山県医師会(岡山市北区駅元町)は1月15日、医師が介護する側、される側を体験する、全国でも珍しい実践講座を、倉敷スイートホスピタル(倉敷市中庄)で開催した。高齢の在宅患者と関わることが多い開業医ら15人が、患者や介護者の気持ちを体感した。

 県医師会では江澤和彦理事(倉敷スイートホスピタル理事長)らを中心に、高齢者が住み慣れた地域で最期まで暮らせる「地域包括ケアシステム」の構築に向けて研究を進めている。システム構築には、医療と介護分野が連携を深めることが欠かせないことから、医師たちに介護の実態とその重要性を学んでもらおうと、講座を企画した。

 講座は、介護施設のプロデュースやケア方法を指導する介護総合研究所「元気の素」の上野文規代表が指導した。車椅子への移動やベッドでの寝返り、入浴など、介助が必要なさまざまな場面が設定され、医師たちは患者役と介護者役の両方を体験。要介護者の頭を下げ前傾姿勢にしてから立ち上がらせるなど、人間の自然な体重移動を手助けする動きを繰り返し練習した。

 自身も介護技術を学び、経営する病院で医療と介護の一体的な提供に力を入れている江澤理事は「医療と介護は、人々の生活を支えるために切り離せない。今後も医師に介護知識を広め、岡山県全体で取り組みの輪を広げていきたい」と語る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年03月06日 更新)

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