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(5)リハビリテーション 倉敷中央病院リハビリテーション科 主任部長心得 秋山仁美

ご本人の希望やご家族のお気持ちを伺いながら、「その人らしい生活」への復帰をサポートする作業療法士

秋山仁美主任部長心得 

 リハビリテーション(リハビリ)は病気やけがに伴うさまざまな障害に対して行われます。障害とは心身機能や、日常生活などの活動、社会参加に不都合が生じた状態のことです。リハビリ=運動というイメージがあるかもしれませんが、それだけではありません。リハビリもお薬と同様に、それぞれの患者さんの状態によって「どのような目的で何をどれだけ行うのか」を医師が処方し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが行います。リハビリを行ううえで気をつけるべき点(リスク)の管理も重要です。

 「がんのリハビリ」も基本的な考え方に大きな違いはありませんが、がんはその種類や治療・予後などが多様であること、短期間に病状が変化する可能性があること、目標を立てる際に余命を考慮しなければいけない場合があることなど、他疾患とは少し区別が必要な点もあります。

 がんのリハビリで対象となる障害には、がんそのものによる障害と治療の過程などで生じてくる障害があります=。また、がんの経過の時期によってリハビリの目的も変化します。例えば、当院では手術が決まると、必要な患者さんには手術前から手術に向けた呼吸訓練の指導などを行います。術後は早期から合併症の予防や離床を行い心身機能や活動の回復を目指します。

 抗がん剤などによる治療の場合も治療開始前から運動などの指導を行うこともあり、治療開始後は体調や血液検査などのデータに応じて、できるだけ体力・筋力の低下が生じないよう、あるいは低下した機能を回復するためにリハビリを行います。

 患者さんやご家族は「まだしんどいのにリハビリなんて」と思われるかもしれませんが、「治療が終わったのに体力・筋力が落ちてしまって動けない」という事態ができるだけ起こらないよう、身体の状態に合わせて無理のない範囲で早期からリハビリを行っています。

 病期が進み、転移などによる障害が生じてくるとそれに対するリハビリも行います。その目的は予防よりも機能回復や生活動作(活動)の改善となりますが、状態によっては機能回復が困難なこともあります。その場合はできるだけ機能を維持しつつ、動作の仕方や環境を整えることで生活動作での不自由さが軽減できるような工夫もします。

 骨転移がある場合には骨折や麻痺(まひ)などのリスクが高くなることがあります。骨折などを起こさないよう主治医や整形外科医などの指示を確認し、安全な方法をリハビリの時だけでなく病棟での生活や家での生活でも行えるよう、ご本人・ご家族・看護師にもお伝えし必要な指導も行います。

 緩和期には積極的な機能訓練は難しくなりますが、患者さんの苦痛ができるだけ生じないよう、姿勢や動き方・動かし方などの工夫や、手足のむくみへの対応などを行います。

 いずれの時期においても、最終的な目標は患者さんのQOL(生活・生命の質)をできるだけ維持・向上することといえます。患者さんが何を望まれているのか、そのために何ができて何ができないのか、どのようなリスクがあるのかなど、リハビリスタッフもそれぞれの専門技術・知識を生かし、チームの一員として関わっています。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 あきやま・ひとみ 大阪教育大学教育学部付属高校池田校舎、川崎医科大学医学部卒。川崎医科大学付属病院、国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)、淀川キリスト教病院などを経て、2017年から現職。日本リハビリテーション医学会認定医、専門医。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年04月04日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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