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性同一性障害 小学生で大半違和感 岡山大大学院患者調査 68%「自殺考えた」

 肉体的な性別と心の性別が一致しない性同一性障害で、患者の大半が小学校時代に既に自分の性別に違和感を覚え、全体の四人に一人がその後不登校になり、さらに自殺を考えたことのある人は七割近くにも上ることが、中塚幹也・岡山大大学院教授らの実態調査で分かった。

 性同一性障害は、原因がはっきりしておらず患者数なども詳しく分かっていない。小学生当時から患者が違和感を自覚したとする調査結果は、実態を知る上で重要な手掛かりとなり、学校現場での同障害に関する理解と教育が求められそうだ。

 調査は、身体的な性的特徴を変化させるホルモン療法や性別適合手術などの治療を受けるため、同大病院を受診した全国の六百六十一人に聞き取りを行って実施。自分の性に違和感を覚えた時期、不登校や自殺未遂の有無などを尋ねた。

 自分の性に違和感を自覚した時期は、「体は女性で心は男性(FTM)」の患者四百七人のうち84%(三百四十三人)が小学校低学年までに、「体は男性で心は女性(MTF)」の二百五十四人のうち57%(百四十七人)が小学校高学年までと回答。「中学校」と答えたのは、FTMは3%(十三人)、MTFは21%(五十五人)だった。

 また、全体の四人に一人が不登校、五人に一人が自傷行為、自殺未遂を経験。自殺について悩んだことのある人は68%にも上った。自殺を悩む時期は中学校時代が最も多く、小学校も一割以上いた。男性的、女性的な体に変化する二次性徴や、学生服の着用が背景にあることも分かった。

 中塚教授は「教育現場では早い段階から、性同一性障害に対する相談窓口などの対応が必要だと分かった。悩みを抱える子どもたちが相談しやすくなる環境をつくれば、自殺未遂や不登校を経験する人も少なくなるのでは」と話している。


教育との関連指摘

 日本精神神経学会「性同一性障害に関する委員会」委員長の中島豊爾・岡山県精神科医療センター理事長の話 不登校の理由に性同一性障害も含まれるなど、教育上の問題との関連を指摘した点で大変示唆に富む。多感な子どもの心を知る上で、この調査結果を生かしてほしい。


ズーム

 性同一性障害 自分の肉体的な性を受け入れられず苦しむ障害。1998年、埼玉医大が国内で初めて正当な医療としての性別適合手術を実施(今年5月から中止)。岡山大は99年、精神科神経科、産科婦人科、泌尿器科、形成外科が協力してジェンダークリニックを組織、ホルモン療法や適合手術を行っており、これまでの患者数は約750人(今年9月現在)。日本精神神経学会によると、適合手術を実施しているのは岡山大、札幌医大、関西医大のみ。体の性と心の性が一致していて、性的関心が同性に向いている同性愛とは異なる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月09日 更新)

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