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頸動脈詰まっても脳梗塞「専門医検査で早期発見を」 伊達勲・岡山大大学院教授が解説

血管撮影画像。矢印が狭くなった個所(岡山大病院提供)

内膜剥離術の模式図。頸動脈の狭窄部分を切開し内膜とともに摘出する(同)

伊達勲教授

 脳の血管ではなく、首の頸(けい)動脈が詰まることで発症する脳梗塞(こうそく)をご存じだろうか。脳ドックなど検査技術の進歩で早期発見が可能になり、近年注目されるようになった。頸動脈が詰まる原因や検査・治療について、岡山大大学院の伊達勲教授(脳神経外科)に解説してもらった。

 以前、検診で岡山大病院(岡山市鹿田町)を受診した七十代の男性は、自分の画像検査の結果を見て驚いた。右の頸動脈が非常に細く、脳に十分な血液を送れなくなっていたからだ。

 「代わりに左の頸動脈から血液が供給されていたが、放っておいたら脳梗塞になる可能性が高かった。早く見つかって良かった」。診察した伊達勲教授が振り返る。

 男性の病名は「頸動脈狭窄(きょうさく)症」。頸動脈(直径約五ミリ)の一部が動脈硬化が進み狭くなる病気だが、脳梗塞の原因になることは意外に知られていない。

 頸動脈は、あごの骨辺りで脳の方へ行く内頸動脈と顔の方へ行く外頸動脈に分かれる。脳に直結する内頸動脈はコレステロールがたまりやすく、詰まると脳梗塞に発展し命を失いかねない。

 「手足がしびれたり言葉がうまく話せないなど一過性の症状に気付く患者もいるが、自覚症状がほとんどないケースもある」と伊達教授。

 「自覚症状がないのは、頸動脈がゆっくり徐々に狭くなるため、体が順応してバイパスとなる血管ができたり、反対側の頸動脈から血液を供給することで平常を保っているだけ。何かの拍子で血液を送ることができなくなる可能性もある」

 主な患者は六十―八十代でここ十年で急増、原因は食生活の欧米化などが指摘されている。伊達教授は「頸動脈を詰まらせるのは、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙とみられる。生活習慣病にもつながる『四大危険因子』だけに、心当たりのある人は気を付けて」と日ごろからの注意を促す。

 最近は画像診断の技術が進歩したため、発見しやすくなった。超音波エコーやMRA(磁気共鳴血管撮影)、三次元で血管を撮影する3D―CTAなどを使えば無症状でも見つけることが可能。伊達教授は「特にエコーや造影剤を使わないMRAは身体的負担も軽い」と説明する。

 ただ、画像検査にも注意点はある。手、足のしびれなどにいち早く気づき、病院で検査を行っても、通常の頭部CT(コンピューター断層撮影装置)検査では、頸動脈まで映らず見つからない可能性があるからだ。伊達教授は「ぜひ神経内科や脳神経外科の専門医がいる病院で症状を詳しく話し受診してほしい」と呼び掛ける。

 発見した場合は、血液を固まりにくくする薬を投与するが、頸動脈が六割以上狭窄していた場合は手術を行う。

 手術は、頸動脈の血流を一時遮断して切開し、狭窄部分を血管の内膜とともに摘出する「内膜剥離(はくり)術(CEA)」、血管内から金属の網状の筒(ステント)を狭窄部に通して広げる「ステント留置術(CAS)」の二種類。

 CEAは全身麻酔、CASは局所麻酔で行うため、「通常はCEAで、高齢の患者にはCASを行う」と伊達教授。手術時間はともに一―三時間で、五―十日程度で退院できるという。CEAはすでに保険適用され、CASも二〇〇八年四月には適用になる見込みだ。

 伊達教授は「頸動脈が狭窄していると、心臓の冠動脈など体のほかの血管も動脈硬化を起こしているケースが多い。病気の予防法は生活習慣病に注意し、四大危険因子を避けるよう努力すること」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月22日 更新)

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