文字 

子ども急性脳炎 インフル脳症が25% 岡山大大学院 内訳や死亡率初調査

森島恒雄教授

 種別ごとの患者の割合や死亡率などが定かでない子どもの急性脳炎・脳症を対象にした全国調査で、インフルエンザ脳症の比率が四人に一人と最も高く、ロタウイルス脳症では後遺症が生じやすいことが分かった。岡山大大学院の森島恒雄教授(小児医科学)らの研究で、二十五日から東京で開かれる日本小児科学会で発表される。

 子どもの急性脳炎・脳症の全体像につながる調査は初めて。最悪の場合、死に至るケースもある病態の解明や診断・治療法確立の足がかりとなる成果として注目される。

 調査は二〇〇五―〇六年の二年間、小児科を持つ全国二千八百四十八の医療機関を対象に実施。千三百三十九施設から回答を得た。

 その結果、子どもの急性脳炎・脳症は千八十二件で、インフルエンザ脳症が二百四十四件と最多。ヒトヘルペスウイルス(HHV)6型とほぼ同種の7型脳症が計百四件、感染性胃腸炎の原因となるロタウイルスによって引き起こされる脳症が四十一件と続いた。

 各脳症の死亡率はインフル6%、ロタ5%、HHV6、7型2%。ロタは25%が寝たきりなどの重度後遺症を発症、てんかんなどの軽度後遺症が生じた患者(20%)を含めると、二人に一人に何らかの影響が出た。

 インフルエンザ脳症の場合、厚生労働省のガイドラインではステロイド剤を短期間で集中的に投与するパルス療法が効果的とされているが、今回の調査では、有効性に関する客観的なデータがないまま他の脳症にも同じ治療法が行われている実態も明らかになった。

 森島教授は「アンケートの回答率からすると、年間約千人の子どもに急性脳炎・脳症が起きていると推測される。今後、インフルエンザ脳症の治療法が他の脳症にも効果があるかどうか調べたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年04月22日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ