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(3)小児科医が関わる障害児医療と療育 旭川荘療育・医療センター小児科医長 竹内絵理子

旭川児童院通園センターの集団保育活動。看護師による医療的なサポートを受けながら参加できる

旭川荘療育・医療センターでは医療的ケアを必要とする障害児の短期入所を受け入れ、診察も行う

竹内絵理子小児科医長

 お子さんが生まれると、生後3カ月、1歳6カ月、3歳などの時期に乳幼児健診を受けます。この健診で発達の遅れが見られた場合、原因となる病気がないか調べるために病院に紹介されます。

 同時に発達を促進する療育(リハビリテーション)を受けるために、旭川荘療育・医療センターをはじめとする療育専門機関に紹介されます。また新生児医療の進歩に伴い、出生時に新生児集中治療室(NICU)で管理されたお子さんの中にも、早期療育を受けるために当センターに来院されるお子さんが増えています。

 初めて当センターに来院されるご家族は不安でいっぱいです。発達の遅れの原因が分かっている場合も、分かっていない場合もあります。それでも、現在のお子さんの状態を説明し、今この年齢で何をすべきか、就園や就学に向けて何をしていけばよいかといった少し先の見通しをお話しすることで、ご家族は漠然とした不安から逃れられることもあります。こうしてお子さんの定期的な療育が始まります。

 療育の担当者(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・保育士・心理士など)は、医師の指示のもと、子どもの発達段階に合った療育を提供します。

 療育のメニューには、歩く、座るなどの運動発達を促進する理学療法、遊びや身の回りのことをする動作、手先の細かい動作を練習する作業療法、言語発達やコミュニケーションを促す言語聴覚療法などがあります。自然に身につくと思われがちな社会性の発達についても、小集団療育に参加して学んでもらう場合もあります。

 お子さんが保育園や小学校での集団生活に参加する際には、必要な支援を園や学校にお伝えします。担任の先生以外にも、手助けをしてくれる支援の先生をお願いして加えていただくこともあります。

 障害のために就園が難しい場合には、児童発達支援センターなどが行う集団保育に参加してもらいます。中でも障害が重く、医療的ケアを必要とするお子さんを受け入れているのが、旭川児童院通園センターです。歩けないといった運動機能障害だけではなく、呼吸がうまくできないお子さんや、ご飯が食べられない摂食嚥下(えんげ)障害などのお子さんもいます。

 このようなお子さんは、気道の痰(たん)の吸引や人工呼吸管理、管を使った栄養の注入などの医療的ケアが必要です。集団生活に参加するには看護師など専門スタッフの助けが必要ですが、一般の園や学校では対応できないことが多くあります。日本の障害児に対する支援体制は、まだまだ発達途中なのです。

 お子さんの障害が重い場合、家族が家庭で24時間の医療的ケアをしていることもあります。その手助けをするために、旭川荘療育・医療センターをはじめとする複数の病院では、専門スタッフが障害児者を短期間お預かりする短期入所を行っています。

 しかし、障害が重いお子さんほど、環境が変わるとけいれんや嘔吐(おうと)、呼吸停止など命に関わるような反応が出るため、短期入所をするためには慎重に体験練習を重ねる必要があります。時間も人手も必要であり、現在は需要が供給を上回っている状態です。

 障害のあるお子さんを家庭だけで育てることは、多くの困難を伴います。元気なお子さんでも大変な子育てに、発達や病気の心配が加わると悩みは尽きません。そんなご家族をサポートし、一緒に子育てを考えていくのが、障害児者医療に関わる私たち小児科医の仕事です。

 障害児者とその家族が、支援を受けながら潤いのある生活を送れる社会が望まれています。それには医療側の力のみではなく、行政をはじめ社会全体がサポートする体制が必要です。

     ◇

 旭川荘療育・医療センター(086―275―8555)

 たけうち・えりこ 岡山一宮高校、愛媛大学医学部卒。愛媛大学医学部附属病院、西条中央病院(愛媛県西条市)などを経て、2003年より現職。2010年より旭川児童院通園センター副所長。小児科専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年04月16日 更新)

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