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のど冷やし脳低温に 気道確保マスクを試作 岡山大大学院・森田教授ら 救急向け

咽頭冷却機能付き気道確保マスクの試作品

 岡山大大学院の森田潔教授(麻酔・蘇生(そせい)学)と岡山大病院の武田吉正講師(同)らは、重い脳障害を受けた患者の脳の温度を低く保って神経細胞の保護・回復を図る「脳低温療法」で、のどを集中的に冷やして脳の温度を下げる咽頭(いんとう)冷却機能付きの気道確保マスクを試作した。2010年度末までに救急現場での実用化を目指す。

 気道確保マスクは塩化ビニール製で、冷水循環用のチューブと一体化。口から挿入し、マスクを通じて人工呼吸を行いながら、頸(けい)動脈付近と接したチューブに冷水を循環させ、心臓から脳に向かう血液を冷やす。

 心肺停止から蘇生した後には、神経細胞に強い障害を引き起こすグルタミン酸が急速に増えるため、早急な対応が必要。だが全身を冷やすなど既存の脳低温療法では、脳温が下がるまで長い時間がかかったり、脳全体の温度を均一にできないなどの課題がある。

 これに対し、試作した気道確保マスクはコンパクトなため救急車に搭載でき、心肺停止状態での使用も見込めるという。森田教授らは咽頭冷却機能について既に、頸動脈を経由すれば10分間で脳温を2度下げられることをニホンザルの実験で確認している。

 武田講師は「患者の容体が一刻を争う救急現場で活用できれば、社会復帰率の向上が期待できる。試作品を使った動物実験で効果を検証したい」としている。

ズーム

 脳低温療法 頭部外傷や脳血管障害で脳の損傷が激しい患者の体温や脳の温度を33度程度に下げ、神経細胞の破壊を食い止める治療法。水冷式用具で患者を包んで全身を冷やしたり、ヘルメット型機器で頭や首だけを冷やす方法がある。発症後8時間までは有効性が報告されている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年03月24日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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