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幻肢痛治療へ仮想現実システム開発 岡山大 手足失った患者の症状緩和

幻肢痛治療用のバーチャルリアリティーシステム

 岡山大の付属病院と大学院自然科学研究科は、事故などで切断し失った手足が痛むように感じる幻肢痛(げんしつう)の治療へ、新たなバーチャルリアリティー(仮想現実)システムを開発した。同大の「医工連携」の取り組みで、市販ゲーム機を活用し安価に製作。同病院は自宅治療用に機器の貸し出しも検討する。

 手の幻肢痛では、直角に立てた鏡に手をかざすと逆の手が映ったように見える性質を利用し、失った手足が正常に動いていることを脳に錯覚させる「鏡療法」が治療法の1つ。

 今回のシステムは同療法を応用し、片腕を失った患者を対象に製作。市販ゲーム機のリモコン▽パソコン▽赤外線通信ができる小型装置▽専用ソフト―で構成し、同研究科博士前期課程(機械システム工学専攻)の福森聡さんらが手掛けた。

 小型装置を健常な手に装着すると、パソコン画面は反対の失った手と複数のボールを表示。手を握ると連動して画面上の手がボールをつかむ仕組み。「脳は手を『動かせ』と指令を出すと、『動いた』という情報を待つ。視覚情報だけでも脳に戻ることが、痛みの緩和につながる」と佐藤健治岡山大病院麻酔科蘇生(そせい)科助教。

 治療システムでは同大が昨年、同療法を応用したバーチャル機器を約600万円かけ製作したが1台だけで、患者は通院治療の必要があった。自宅で使える簡易版開発に向け、学部を越えた連携に取り組む同大医歯工学先端技術研究開発センターを通じて昨秋から、共同研究を進めていた。

 佐藤助教は「今回のシステムは自宅で好きな時間にゲーム感覚で繰り返し行うことが可能」と説明。骨折治療後などで痛みがひかない複合性局所疼痛(とうつう)症候群の患者にも効果があることから、さらに治療効果の向上を検証していく。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年05月28日 更新)

タグ: 健康岡山大学病院

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