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「不育症」の女性 病院対応に4割不満 岡山大大学院・中塚教授ら調査

 流産、死産を繰り返す「不育症」の女性の約4割が、病院の対応に不満を持っているという調査結果を、岡山大大学院の中塚幹也教授(看護学分野)らが28日までにまとめた。医療スタッフの配慮に欠けた言動が、流産、死産で傷ついた女性の精神状態をさらに悪化させている実態が浮かび上がったといえ、中塚教授は「次の妊娠に向けた意欲をそぐ一因」と指摘している。

 不育症は、血液が固まりやすくなる凝固異常のため胎盤の血管が詰まることで起きたり、子宮の形態異常や染色体異常が原因。患者数など詳しい実態は分かっていない。

 調査は厚生労働省の科学研究の一環。中塚教授と岡山大を今春卒業した助産師の矢冨茜さんが、同大病院不育症専門外来を2008年7―10月に受診した109人を対象にアンケートを行った。

 結果は、病院の環境について回答した78人のうち、「良くなかった」としたのが32人(41%)。多かった理由(複数回答)は「大声で泣ける部屋を使えなかった」(60人)、死産を心理的に受け入れられない時期に「(別の人の元気な)赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた」(19人)―などだった。

 不愉快に感じた医療スタッフの対応(複数回答)は「看護師、助産師が『悲しいときは我慢しないで』などと声をかけてくれなかった」(67人)、医師から「『早く忘れなさい』と言われた」(12人)が多かった。中には、スタッフから「よくあること」と言われたり、泣くのをやめるよう注意された人も。

 中塚教授は「不育症女性の85%は適切な検査と治療で出産できるようになるのに、立ち直れないまま治療をあきらめてしまう人も多い」とみている。

 さらに妊娠に関する心理状態を点数化(最高100点)して調査したところ、初めて妊娠したうれしさは平均80点だが、流産、死産を1回経験した後の妊娠は63点、2回経験後は53点と低下した。矢冨さんは「再び子どもを亡くす不安から、本来なら喜びたい気持ちを必死に抑え込んでいる」と分析している。

 死産は全国で年間約3万件(厚労省調べ)を数え、妊娠経験のある女性の約4割が生涯に流産を経験するというデータもある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年06月29日 更新)

タグ: 健康女性岡山大学病院

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