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がん病巣100%切除に成功 岡大開発の細胞光らせるウイルスで

がん細胞が光って見えるマウスの腹部(写真上)がんを切除し、光る部位がなくなったマウスの腹部(同下)

藤原俊義准教授

岸本浩行研究員

 がん細胞だけを光らせる岡山大開発の新ウイルス「テロメスキャン」を使い、1ミリ以下のものも含め病巣のがんを100%切除することに米カリフォルニア大サンディエゴ校のグループがマウスの実験で初めて成功した。岡山大との共同研究として25日付米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。

 テロメスキャンは、岡山大病院遺伝子・細胞治療センターの藤原俊義准教授(消化器・腫瘍(しゅよう)外科学)らが2006年に開発し、がんの切除に初めて活用。同センターは「がん手術のナビゲーションシステムとして有効なことを証明した」としている。

 テロメスキャンは無害のウイルスに、細胞ががん化したときだけ活性化する遺伝子とオワンクラゲの発光遺伝子を結合。ノーベル賞受賞者の下村脩・米ボストン大名誉教授が発見した蛍光タンパク質を応用した手法で、がん本体や転移したリンパ節で増殖し、特殊な光を当てると緑色に光る。

 手術は、岡山大で研究に携わったカリフォルニア大の岸本浩行研究員(36)を中心に実施。9匹のマウスの腹部に人の大腸がんを移植し、12日後にテロメスキャンを注射。さらに5日後、開腹して特殊光を当てながらがんを切除した。患部が発光するため、0・6ミリの腫瘍など肉眼では見つけにくい小さながんもすべて取り除けた。

 藤原准教授は「テロメスキャンはがん細胞だけで増殖するので極小の腫瘍まで区別できる。さらに大型の動物などで効果を確かめ、臨床応用へ研究を進めたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年08月25日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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