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未分化のiPS細胞、脳に移植 疾患あれば腫瘍拡大 岡山大大学院教授ら マウス実験で確認

阿部康二教授

河相裕美さん

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の阿部康二教授(脳神経内科学)と大学院生の河相裕美さん(同)らの研究グループは、脳梗塞(こうそく)のマウスの脳に分化していない人工多能性幹細胞(iPS細胞)を移植すると、大きな腫瘍(しゅよう)が発生することを確認した。iPS細胞は臓器などの再生医療に向けた研究が国内外で進められているが、未分化のiPS細胞を疾患部位に移植した場合、正常な部位より腫瘍が大きくなる可能性があることを示した。米国の脳循環代謝学会誌(電子版)に掲載された。

 阿部教授らは、人工的に血流を止めて脳梗塞を起こしたマウス11匹と正常なマウス8匹に未分化のiPS細胞を移植、計19匹の脳を調べた。iPS細胞は未分化の細胞が含まれているとがん化することが課題だが、脳梗塞に移植した場合、生きて機能するかが不明だった。

 脳梗塞マウスは、いずれも14日後には脳の3分の1に当たる32立方ミリメートル程度の腫瘍ができ、28日後には50立方ミリメートル程度に拡大。正常なマウスは14、28日後とも腫瘍は発生していたが、ともに3立方ミリメートル程度にとどまった。

 研究グループは、腫瘍部分の染色解析を行ったところ、iPS細胞の作成に必要な遺伝子のうち、細胞増殖を促し、過剰に働くと腫瘍化する「c―Myc」が時間の経過とともに活発化していることを確認し、腫瘍の拡大に影響したと推測。さらに梗塞になった脳にiPS細胞の働きを活発化させて腫瘍を増やすタンパク質や、正常な脳にiPS細胞の分化を抑えるタンパク質が存在する可能性もあるとしている。

 阿部教授は「神経細胞ができるなど良い作用もあった。腫瘍を大きくするタンパク質を特定し制御できれば、iPS細胞を効果的に再生医療に活用することは十分可能」とする。今後は分化したiPS細胞での研究も進める予定。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年03月30日 更新)

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