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岡山大発、がん治療薬 米で6月臨床試験 抑制遺伝子を使用

公文裕巳教授

 岡山大発のベンチャー企業「桃太郎 源 ( げん ) 」(岡山市北区津島中、塩見均社長)は、同大が発見したがん抑制遺伝子を使った新規の遺伝子医薬の臨床試験を米食品医薬品局(FDA)に申請し31日、受理された。臨床試験は米国の病院で前立腺がん患者を対象に行い、6月上旬をめどに1例目を始める予定。安全性と効果を確認し、新たながん治療法の確立を目指す。

 臨床試験に使うのは、がん抑制遺伝子「 REIC ( レイク ) 」を、患部への運び役となるアデノウイルスに組み込んだ治療薬。同遺伝子をヒトのがん治療に用いるのは世界で初めて。

 計画では、ニューヨークのマウントサイナイ病院で臨床試験。再発リスクの高い限局性前立腺がんで、患部の摘出手術を予定している患者を対象に実施する。手術の約1カ月前に、患部に投与。安全性を確認するとともに、手術までの間に、がんの活性を示す 腫瘍 ( しゅよう ) マーカーをどの程度低下させるかや、摘出組織での治療効果、術後の再発抑制効果などを検証する。投与量を3段階に変え、1年間で計12例の試験を予定している。

 FDAには3月1日に申請。治療薬としての製剤の品質、試験の新規性、妥当性が承認された。試験の倫理性、安全性などに関しては米国立衛生研究所(NIH)の公聴会での審査も通過した。

 同社の取締役を務める公文裕巳岡山大大学院医歯薬学総合研究科教授(泌尿器病態学)は「臨床試験の実績を重ね、岡山発のがん治療法として確立し、前立腺がんだけでなく、悪性中皮腫など難治固形がんに苦しむ世界中の患者に届けたい」と話している。

実用化へ一歩

 浅野茂隆日本遺伝子治療学会事務局長(早稲田大理工学術院教授)の話 高いハードルを乗り越え、実用化に向けた大きな一歩だ。臨床試験でREICの力が実証されることを期待している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年04月01日 更新)

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