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2 呼吸困難 異変見逃さず受診を

 一歳七カ月の女の子。前日から少し熱(三七・八度)があり、せきも時々ありました。今日になって熱は三八度となり、午後から少し乾いたせきをするようになりました。夕方になると声がかれ、飲んだり食べたりしなくなりました。また、犬がほえるようなせきをするようになり、息を苦しそうにするので、救急センターに連れてこられました。

   ◇   ◇

 子どもの呼吸困難は年齢による違いはありますが、軽いうちに発見して早めに対処することが大事です。この症例のように、異変を見逃さず、早く受診したことは良い対応でした。

 この女の子は、急性 喉頭炎 ( こうとうえん ) (仮性クループと呼ぶこともある)でした。喉頭(声を出す部位周辺)が炎症のために 腫 ( は ) れ、原因はほとんどの場合、ウイルス感染によるものと考えられています。症状の特徴として、犬がキャンキャン、ケンケンと鳴くようなせき( 犬吠様咳嗽 ( けんばいようがいそう ) )、かれた声( 嗄声 ( させい ) )、息を吸い込むときにヒューッと音がする(吸気性 喘鳴 ( ぜいめい ) )が挙げられます。

 風邪症状から始まり、急激に症状が進行するので注意が必要です。喉頭の腫れが強いと、急に息ができなくなります。とにかく、こうした症状があれば、早く受診することです。炎症を鎮めるのに湿気と冷却は効果があるので、来院までに冷たい飲み物を少しずつ与えることは良いと思います。

 治療は、血管を収縮させて腫れを少しでも抑える薬(エピネフリン)や、炎症を抑える効果を期待する薬(ステロイド)などの吸入を行います。もし、それで軽快しても油断はできません。数時間で元のようになることがしばしばです。できれば、入院して経過を見た方が安心です。

 症例の女の子は、吸入で良くなったのでいったん帰りましたが、夜中に同じような状態となり、再度救急センターに来ました。今度は薬を吸入しても、ゼーゼーという症状が残ったので入院となりました。

 新生児や乳児の気道は次に示すような弱点があり呼吸困難になりやすいので、注意しましょう。気道がやわらかくて狭い▽呼吸筋の力が弱い▽鼻呼吸に頼っているところがある▽ 痰 ( たん ) を出す力が弱い。

 病気により症状の違いはありますが、呼吸の数が多い▽頭を振るようにして呼吸している▽鼻をぴくぴくさせている▽みずおちが落ち込むような呼吸をしている▽肩を上下させるような呼吸をしている▽うなるような声が聞こえる▽ゼーゼー言っている―などの症状があれば診察を受けましょう。

 呼吸困難で注意する病気を、ほかに幾つか挙げておきます。呼吸器感染(特に気管支炎、肺炎)は重症になれば必ず呼吸困難が起こります。二歳くらいまではRSウイルスによる細気管支炎に注意しましょう。一見、ぜんそくのようですが、急激に呼吸困難に陥ってしまう時があります。

 ぜんそくの発作はどの年齢層でも注意が必要です。特に水分が飲めていない時は、痰がねばくなって詰まってしまいます。このようなとき、うっかり薬を吸入すると痰が水分を吸って気道を 閉塞 ( へいそく ) してしまい、急に呼吸ができなくなることがあります。

(馬場清・倉敷中央病院副院長)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年10月15日 更新)

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