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6 風呂でおぼれる まず意識、呼吸を確認

 一歳の男の子。お母さんと一緒にお風呂に入っていました。お母さんが髪を洗い終わってふと目をやると、男の子は湯船にうつ伏せで浮かんでいました。急いで湯船から引き上げるとぐったりして顔色は真っ青です。「○○ちゃん、○○ちゃん」と呼んでも反応がありません。呼吸も止まっているように見えました。マウス・ツー・マウスで人工呼吸をするとおう吐し、そのあと呼吸を始め、顔色が回復してきました。でもまだ、目を開けてくれません。その後一一九番へ通報し病院へ搬送されました。

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 おぼれたときの初期 蘇生 ( そせい ) 法では、意識がなく呼吸していない場合は人工呼吸を二回行って反応を見ることが勧められています。お母さんの初期対応は比較的この流れに沿って行われていました。

  溺死 ( できし ) は子どもの死因の中で大きな比率を占めています。乳幼児ではお風呂、年長になるほどプールや海などでの事故が増えてきます。乳幼児はわずか三センチの水深でもおぼれる可能性があります。おぼれることにより長時間呼吸ができなくなると、脳を含め全身の臓器が低酸素にさらされるために臓器に障害が起こってきます。また、気管に水が入ることなどによって肺炎などが起きることもあります。

 この男の子の場合は幸い発見が早く、初期対応も功を奏し、病院到着時には意識はしっかりとしていました。診察後は経過をみるために入院となりました。肺炎を合併しましたが、数日後、元気に退院できました。

 もしも子どもがお風呂でおぼれているのを見つけたら、湯船からすぐに引き上げて意識があるかないかを確認します。もしも意識がない場合は気道(口・鼻から肺までの空気の通り道)が維持できるように、片手であご先を支えて上げ、もう一方の手で額を押さえるようにします。その上で呼吸しているかどうかを確認し、呼吸していない時は気道を保ちながら人工呼吸を二回行います。

 赤ちゃんの場合はマウス・ツー・マウス(口対口)による人工呼吸よりも、人工呼吸をする人の口から赤ちゃんの鼻もしくは赤ちゃんの鼻と口の両方から呼気を吹き込むことが勧められています。

 もしも人工呼吸の後で心臓が動いているサインがなければ心臓マッサージを行います。初期蘇生法はあらかじめ講習会などで練習をしておくことにより誤った蘇生となりにくくなるため、機会があれば講習を受けることが望まれます。

 水だけでなく火、車、薬毒物など子どもの周りには危険がいっぱいです。事故による障害の確率を少しでも下げるためには何かが起きてしまう前に予防対策を取ることが最も大切です。例えば、浴室では滑り止め対策を行うといったことです。また、緊急時にできるだけ速やかに適切な対応を取ることも重要です。消防署によっては事前に申し込みをしておくと初期蘇生法の講習をしてくれる署もあります。

 (福原信一・岡山医療センター小児科医師)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月19日 更新)

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