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乳がん・子宮がん早期発見へ 定期的に検診受けよう  内容や受診状況は

乳がんの早期発見に役立つマンモグラフィー

乳がん年齢別罹患率(グラフ)

 9月は「がん征圧月間」(日本対がん協会、日本医師会共催)。がんの早期発見には検診も活用したい。ただ、乳がん・子宮がんの婦人科検診に対し、恥ずかしさなどからためらいを感じる女性も少なくないだろう。また、多忙などを理由に受診機会を逃してしまいがち。まずは、検診に行く意識を持つことから始めよう。記者が初めて乳房エックス線撮影(マンモグラフィー)を体験した乳がん検診を中心に、検診内容や受診状況などを紹介する。

マンモグラフィー検査 微細な病変が鮮明

乳がん


 会社からの定期健診として今月初め、記者は社会保険岡山健康管理センター(岡山市昭和町)で婦人科検診を受診した。

 乳がん検診の主な方法のうち、医師による視触診は毎年受けてきたが、マンモグラフィーは初めての体験。診療放射線技師から「乳房を圧迫し薄く引きのばして写真を撮ります。圧迫すると、放射線の被ばく量も少なくてすみますから」と説明を受け、緊張しながら装置の前に立つ。

 技師の女性が片側の乳房を引っ張り、圧迫板に挟んだ。押しつぶされたときに痛みがあったが、「健康維持のため」と思い我慢すること十数秒。左右の乳房をそれぞれ圧迫し、無事撮影を終えた。

21・8%

 マンモグラフィーは乳がんの初期症状である微細な病変(石灰化)を鮮明に映し出せるのが特徴。国の二〇〇二年度に検診で見つかった乳がんの検診方法別発見率をみると、視触診単独0・11%、マンモグラフィーと視触診併用0・19%で、マンモグラフィーを併用した場合の発見率が高くなっている。

 「乳がんは早期ならば、適切な治療によって約90%の人が治る。だからこそ、早期発見のために定期的な検診を受けることが大切」と岡山県成人病検診管理指導協議会乳がん部会長の岡崎邦泰医師。日本人の場合、発がんから乳がん細胞が一センチになるまでに約八年かかり、その後は約一年たつごとに倍の大きさになっていくという。

 日本対がん協会(東京)によると、日本では女性の二十三人に一人が乳がんに罹患(りかん)するといわれている。三十代から増え、女性の壮年層(三十~六十四歳)のがん死亡原因の一位になっている。

 しかし、乳がん検診の受診率は低迷しているのが現状。四十歳以上の市町村検診対象者(専業主婦、自営業者など)の二〇〇三年度の受診率は全国12・9%、岡山県21・8%。岡山県の受診率は全国八位なので上位といえるが、同県における、ほかのがん検診受診率(肺がん50・4%、大腸がん33・6%、胃がん28・5%)と比べると、かなりの開きがある。

「岡山方式」

 厚生労働省が昨年四月に示した乳がん検診の指針では、四十歳以上の女性は二年に一回、マンモグラフィーと視触診の併用検診の受診を打ち出している。一方、岡山県は同七月、国の指針より検診内容を充実させた独自の指針「岡山方式」を策定し、各市町村へ通知。四十歳以上は毎年、マンモグラフィーと視触診の併用検診を受診▽三十代は年一回、視触診を受診―などとしている。

 乳がん検診の自己負担はどのくらいかかるのか。岡山県健康対策課によると、市町村検診対象者(専業主婦、自営業者など)の場合、自治体により異なる。集団検診のマンモグラフィーと視触診の併用は五百~千七百円(七十歳以上は無料~千二百円)▽視触診のみは三百~五百円(七十歳以上は無料または百円)。個別検診のマンモグラフィーと視触診の併用は千二百~二千五百円▽視触診のみは五百~八百円。

 各自治体は広報紙や愛育委員などを通じて、住民に検診の日程などを知らせている。県健康対策課では検診を呼び掛けるちらしを作るなどして啓発しており、井上五月主査は「自分は大丈夫と思い込まず、一人ひとりが検診を受ける意識を高く持ってほしい」と話している。

受診率低く啓発 岡山県医師会や県健康対策課

子宮がん


 乳がんと同様に、子宮がん(頚部(けいぶ))検診の受診率も低迷。岡山県医師会によると、二〇〇二年度の受診率は全国14・6%、岡山県20・3%(全国十二位)にとどまっている。同会副会長の平野隆茂医師は「必ず受ける人と、まったく受けない人に分かれている状況も問題」と言う。

 子宮がんには頚部がんと体部がんがある。頚部がんの多くは、性行為で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が関与しており、性活動が活発な二十代から罹患率が増えている。全国では年間約七千人が罹患し、約二千人が死亡。一方、体部がんの罹患率は五十~六十代で高く、二〇〇二年の死亡者数は全国で千二百九十九人。

 厚生労働省の指針では子宮がん(頚部)検診について、二十歳以上の女性に二年に一回の受診を促している。検診内容は内診や、頚部の細胞を採取して顕微鏡で調べる細胞診など。子宮体部がんの検診は、有症状またはハイリスクの人に対して医療機関の受診を勧め、本人が同意する場合に頚部がん検診に合わせて子宮体部の細胞診を実施している。

 平野医師は「国の指針は二年に一回の受診間隔になっているが、心配なら毎年受診してもいい。これまで一度も受けていない人は積極的に受診を」と呼び掛けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年09月27日 更新)

タグ: がん健康女性お産

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