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第6回 岡山大病院 呼吸器外科 肺移植、国内最多61例 心停止後の実施目指す

脳死肺移植を手掛ける呼吸器外科の医師たち(岡山大病院提供)

大藤剛宏助教

 肺移植は、重い肺の病気の患者から肺を摘出し、別の人の肺を移植する治療法。岡山大病院では呼吸器外科を中心に一九九八年十月の第一例以降、計六十一例(二月二十八日現在)を行い、実施数は国内で最も多い。

 肺移植には健康な人の肺の一部を移植する生体移植と、法的に脳死と判定された人からの脳死移植という二通りがあり、岡山大病院では生体移植が四十九例と全体の80%を占める。生体移植は脳死移植に比べ、患者の容体が悪化した際に緊急的に行う場合が多いが、治療結果の指標となる五年生存率は90%に達する。

 脳死移植の十二例を加えた五年生存率は82%にダウンするものの、世界平均の50%に比べると岡山大病院の成績は突出した好成績を誇る。その記録を支えるのが、まさに病院力と言える院内の協力関係だ。

 移植医療はチーム医療の集大成とされ、手術だけ成功すれば良いのではなく、手術後の容体管理やリハビリテーションなども重要となる。「肺移植では心臓血管外科や麻酔科蘇生科、呼吸器内科、循環器内科との連携が患者の救命に欠かせない」。肺移植責任者を務める大藤剛宏・呼吸器外科助教が解説する。

 国内の肺移植の実施施設は、岡山大病院のほか大阪大病院、東北大病院など八施設。生体、脳死を合わせた移植の実施数は計約百例で岡山大病院はその約六割を占め、全国各地から患者が訪れる。相談も、年間百件を数えるという。

 肺移植の機会を少しでも増やそうと、岡山大病院呼吸器外科は現在、心停止後の肺移植を目指している。腎臓ではすでに広く行われているが、肺は研究が進んでいなかったこともあり、欧米でようやく始まったばかり。

 「国内の肺移植施設によるワーキンググループも発足した。心停止後の肺移植に関する研究成果を実際の治療に還元できるよう努力する」。留学先の豪州で同国第一例を手掛けた大藤助教は意気込みを話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月04日 更新)

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