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第10回 岡山市立市民病院 肝疾患センター 音波の力で腫瘍焼灼

ラジオ波焼灼術に取り組むスタッフ

東俊宏副院長

 肝臓がんは、国内の年間死者数が約三万四千人に達するという。肝疾患センターは、音波の力で腫瘍を焼き殺す「ラジオ波 焼灼 ( しょうしゃく ) 術」を実施。センター長の東俊宏副院長のグループは、これまでに約七百例を重ねる。

 外科手術と違い、腹部を大きく開かず治療するため、患者の体に優しいのが特徴。治療に使うのは電極が付いた「針」で、超音波エコーを使って腫瘍の位置を確認した後、針を刺して患部に熱を発生させ、焼いてしまう。

 治療の対象は、腫瘍の大きさと数で決まる。「直径三センチ以下であれば三個以内で、直径五センチに達していたら一個」(東副院長)が原則だが、対象を広げるケースもある。

 「腫瘍の数が一、二個であれば治療後三、四日で退院できる。入院期間も一週間で済みます」と東副院長。同センターでの治療成績も良く、直径一、二センチ程度の腫瘍一個を治療した場合を見ると五年生存率は78%で、外科手術と比べても見劣りしない結果という。

 ただ、肝臓から出ている胆管と腫瘍の位置が近い場合、ラジオ波の熱が胆管を傷つけてしまい、黄だんを起こす恐れもある。

 こうした治療上の課題を、東副院長は独自のアイデアで克服。冷却水代わりに、胆管に生理食塩水を注入して熱を冷ますことで、胆管の損傷を防いでいる。この手法は、他の医療機関にも広がりを見せているという。

 「難しいケースでも安全で確実に治療する。そのためにセンターは絶えず工夫を重ねている」と東副院長は強調する。

     ◇

 同センターは電子メールでの肝臓病相談(無料)を受け付けている。アドレスはtoshihiro_higashi@city.okayama.okayama.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年04月01日 更新)

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