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自殺抑止に25年 岡山いのちの電話

悩みを抱える人たちの支えになってきた「岡山いのちの電話」事務局

 電話で悩みを聞き、自殺予防に努める「岡山いのちの電話」が開局して25年。仕事や人生、健康、対人関係など幅広い相談にボランティアで応じ、悩みを抱える人たちの心の支えになってきた。一方、相談員や運営費の慢性的な不足という課題を抱える。 

 「『電話のおかげで救われた』と聞くと、自分が存在する意味があったと実感できる」。4年目の女性相談員(53)がほほ笑む。

 岡山いのちの電話協会が25年間に受けた相談は約50万4千件に上る。活動の成果について「相談後の追跡調査をしていないため具体的には不明」と事務局。自殺を実行しながら電話してきた相談者を踏みとどまらせるケースが、年間数件あるという。感謝の電話や手紙が本人、家族から寄せられることもある。

 開局当初は借金や性の悩みが多かったが、近年は対人関係や健康の悩みが増加傾向だ。

 08年の相談は1万8002件。自殺をほのめかす「自殺関連」が1037件で全体の5・8%に上り、過去最悪となった。堀井茂男協会長(慈圭病院長)は「景気悪化で“心の危機”に陥る人の増加が予想され、電話相談のニーズはますます高まる」とみる。

 相談員は養成講座を1年間受け、認定される。認定後も継続的に研修し「相談者の話を傾聴しながら信頼関係を築き、問題解決を促す」(事務局)技術を磨いている。

 現在、相談員は県内各地の20~70代の主婦や会社員ら約200人。高齢化や家庭の事情により途中で辞退するケースが増えており、ピーク時の3割減で推移している。1日平均15人前後で50~60件に対応。深夜や休日は電話機4台に対し、1~3人になる時間帯が多いという。

 協会の運営を支える寄付が年々減少しているのも懸念材料。不況の影響とみられ、協会の資金ボランティアは個人483人、企業など44団体と、いずれもピーク時から半減した。運営には年間約1千万円かかり、寄付で6割を賄ってきた。しかしここ数年は100万円程度の赤字が続き、繰越金で穴埋めしている。

 手をこまねいているわけではない。協会は資金面での支援組織を近く立ち上げる。「多くの人々の協力を得て活動の維持に努めたい」と堀井協会長。地元企業トップらをメンバーとし、チャリティーイベントなどで収益、会員増を目指す。

 相談員確保策としては、OBへ積極的に復帰を働き掛ける方針。また相談員がストレスを抱えないため、日常的ケアを強化する。


ズーム

 岡山いのちの電話 精神科医、弁護士らが発起人となり1983年、岡山いのちの電話協会を設立した。84年4月に電話相談を開始。約70人の相談員が交代で午後1~9時に対応した。94年から24時間体制。相談電話は086―245―4343。毎月10日をフリーダイヤル(0120―738―556)の日にしている。問い合わせは岡山市内の同協会事務局(086―245―4344)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年12月07日 更新)

タグ: 健康精神疾患

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