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心の病、患者が語る 岡山・京山中で授業 谷山さん(万成病院ひまわり寮)社会復帰へ理解訴え

田淵施設長(左)とともに生徒に講義をする谷山さん

 統合失調症を中心とした「心の病気を学ぶ授業」が3日、岡山市津島京町の京山中学校で行われ、精神科病院・万成病院(同市谷万成)の精神障害者社会復帰施設・ひまわり寮に入所する谷山嘉圓さん(55)が自ら、社会復帰に欠かせない周囲の理解を訴えた。

 授業は人権教育に取り組む同校に、地元のひまわり寮が働き掛け実現。統合失調症は百人に一人が患うという決して珍しくない病気。十五―三十歳の思春期、青年期の発症が多く、早期受診を促す狙いもある。二年生約二百五十人が二月、教諭による三回の授業を受け、仕上げとして谷山さんが精神保健福祉士の田淵泰子・同寮施設長と講義に訪れた。

 谷山さんは二十三歳で統合失調症を発症。これまでの闘病に触れ「自分に合う薬になかなか出合えず夜眠れなかったことや、幻視や幻聴の体験が苦しかった」と振り返った。

 今は治療で症状は治まり、同病院のデイケアに通うほか、週二日は空き缶分別などの仕事に携わっている。「毎日働けなくて残念だが、趣味の英語、ドイツ語の勉強が楽しみ。それを生かし将来、子どもに感動を与える本をつくりたい」と夢を語った。

 生徒の質問にも回答。「差別を感じたことは?」の問いに、障害を隠し清掃の仕事に就いたものの、一カ月ほどで周囲が冷たくなった苦い経験を打ち明けた。「もういいやと思い辞めたが、最初から明かした方が良かった」と悔やんだ。

 「ああ この世界に幸せが訪れて そして私にもうんと訪れますように」―。周囲への感謝を託した自作の詩「春」も朗読、盛んな拍手を受けた。

 一方、田淵さんは同寮が二〇〇三年から五十九回重ねている地域交流イベントを紹介。「『怖い』など精神障害に対する住民の不安も、当事者と接触後は消える」と指摘した。

 近年は、病院を退院した精神障害者にアパートを貸したり、雇用する企業が増えたことも説明。「障害者とどう接したらいいか、よく質問を受けるが、一人の人間としてごく普通に接してほしい」と呼び掛けた。

 生徒は熱心に聴講。授業後、田中慎太郎君(14)は「患者と接したのは初めて。生の声を聞き、つらさを実感できた」、湯浅奈津子さん(14)も「この体験は将来、ハンディのある人と接する際、きっと役立つ」と話した。

 こうした授業は、全国の精神科医らでつくる「精神障害へのアンチスティグマ(偏見解消)研究会」などが二〇〇七年にプログラムや教材を開発し展開。同研究会にかかわる田淵さんは「岡山県内では今回が初めて。今後、他の中学校、高校に広めたい」と期待している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年03月16日 更新)

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