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(4)がん診断の拠点病院を目指して―発がん機序から検診、予防まで 岡山西大寺病院理事長 小林直哉

小林直哉理事長

 がんは、1981年から日本人の死因のトップとなっています。2017年にがんで死亡した人は約37万人、総死亡者の約3割を占めています。そして、毎年、100万人近い人ががんと診断されています。今や日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡する時代になっているのです。まさに国民病と言えるでしょう。

 一方、欧米ではがんによる死亡者数は頭打ちか減少となっています。なぜ、日本ではがんにかかる人や死亡する人が増え続けているのでしょうか。

 がんは遺伝子に異常(変異)が起こることで発症します=図1。長生きするほど遺伝子の変異が増え、がん細胞の数が増えていきます。ですから、がんは老化現象の一つと言えます。統計を見ても、男女とも60歳代からがんによる死亡率が増えていて、高齢になるほど高くなります。日本は世界でもまれにみるスピードで高齢社会を迎えています。高齢者が多くなれば、がん患者も増えてしまうのです。

 そして、高齢化のほかにも、日本でがんの死亡者数が多くなる理由があります。がん検診の受診率の低さです。乳がん検診の受診率はアメリカやイギリスで80%前後なのに対し、日本は約40%と先進国では最低です(15年)。男性の胃がんや肺がんの検診受診率も45%程度に過ぎません(13年)。

 がんは早期に見つければ治癒する可能性が高くなります。これまでの研究によって、胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸(けい)がん、大腸がんの五つのがんは、それぞれ特定の方法で行う検診を受けることで早期に発見でき、さらに治療を行うことで死亡率が低下することが科学的に証明されています=図2

 早期で見つけられれば、がんは決して怖い病気ではありません。がん死亡数が多い部位(16年)を表1に示しますが、先ほどの「検診で見つけることができるがん」がたくさん入っています。「精密検査が必要」と判定されたら早期がんを見つけられるチャンスと考え、自分のため、そして心配してくれる周りの人のためにも、精密検査を受けるようにしましょう。

 岡山西大寺病院では、がん検診に全力で取り組んでいます。がんを発症させる遺伝子の異常は、さまざまな原因で生じます。喫煙や食生活など生活習慣も原因の一つになっています。たばこは肺がんのみならず、他のがんを発症させる要因になっていますし、動物性脂肪が多く食物繊維の少ない食生活は大腸がんや乳がん、前立腺がんなどのリスクを高めます。

 国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」が、がん研究振興財団から11年に公開されました=表2。この新12か条は日本人を対象とした疫学調査や、現時点で妥当な研究方法で明らかとされている証拠を元にまとめられたものです。事実、米国ハーバード大学がん予防センターから1996年に発表されたがんの原因の割合では、「たばこ」30%、「食事」30%、「運動不足」5%、「職業」5%、「遺伝」5%、「ウイルス・細菌」5%、「その他」20%でした。この発表によると生活習慣の改善で、がんの65%は予防可能となります。

 がんを100パーセント予防することはできませんが、定期的にがん検診を受けて早期発見に努め、喫煙など生活習慣を改めることでがんになるリスクを大幅に下げることは可能です。あなた自身やあなたの家族など大切な人のために、がんについて少しでも知っていただければと思います。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 こばやし・なおや 岡山大学医学部卒、同大学院医学研究科修了(医学博士)。同大学医学部外科学第一講座を経て、米国ネブラスカ州立大学医療センターで臓器移植や再生医療に従事した。2010年、岡山西大寺病院院長。12年から同理事長。岡山大学医学部医学科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年04月06日 更新)

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