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第20回 旭川荘療育センター療育園 睦学園 重症心身障害児らに手厚いケア

たんの吸引作業をする工藤園長

 「ジュジュッ、ジュジュッ」。体を横に傾けたり、さすったりしながら、気管切開したのどからスタッフがチューブでたんを吸い取る。合間にラグビーボールのような形のバッグで酸素を送り込む。

 「苦しくない?」。ベッドの男性(23)に、工藤英昭園長が語りかける。

 睦学園は、重症心身障害児を対象に一九九五年に開園。新生児の救急医療が発達して救命率が上がる半面、重い障害が残るケースも多い。約百人の入所者のうち、呼吸器などによる手厚いケアが必要な特に重度の人たち(超重症、準超重症)が15%を占める。

 現在、常勤医師は小児神経科と整形外科の計六人。工藤園長は鳥取大脳神経小児科を振り出しに、国立小児病院(現・国立成育医療センター、東京)、国立精神・神経センター(東京)、東京小児療育病院(同)などで多くの症例をみてきた。

 百万人に一人か二人という難病で、同学園で初めて診断が付いた人も少なくない。知的能力が次第に落ち、歩行も難しくなるDRPLA(歯状核・赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症)が立て続けに二例診断されたこともある。

 病気自体の治療法がない場合も多いが、寝たきりの状態から派生するさまざまな症状は改善できる。重力で下あごが後ろに引き気道が狭くなって無呼吸を繰り返したり、胃の入り口がゆるんで食べ物が逆流する―。手術で改善すると、途端に表情が和らぐ。

 小児神経が専門の工藤園長は「もの言わぬ人たちから声を聞き、多様な事例に対応しながら、入所者が少しでも生活しやすくなるようにしたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年07月01日 更新)

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