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第27回 きのこエスポアール病院 佐々木健院長 医学とは違うアプローチ

佐々木健院長

 きのこエスポアール病院は1984年、日本で初めての認知症高齢者専門病院として開院、岡山県内でも先駆的な役割を果たしてきた。現在は投薬などの医学療法と、患者の生活環境を重視するケアを組み合わせた医療で知られる。隣接する老人保健施設やグループホームなどと連携し、「きのこグループ」を挙げた取り組みが進んでいる。

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佐々木健院長


 病気に立ち向かうだけでなく、「認知症の人のために何ができるか」を理念としている。なぜなら、認知症は狭い意味の医学だけでは、解決することが困難だからだ。

 もちろん、開院したころに比べ、医学は進歩した。かつては「治らない病気」「人生終わり」といったネガティブなイメージが強かった認知症だが、現在は的確な診断が可能で、進行を遅らせる薬も登場している。

 それでも、完全に治せるかというと、まだ難しい。特にアルツハイマー病はポピュラーな病気になったとはいえ、周囲の偏見がその人に跳ね返り、人間関係が悪化するケースが少なくない。

 医学の進歩は大事だが、私は医学とは違うアプローチが必要だと考えている。その人を人間的に理解し、よいコンタクトを保つ「パーソンセンタードケア」という発想だ。

 経験から言えば、認知症の人が望んでいる暮らしは多くの場合、周りの人と調和を保ちながら、これまで通り生活すること。当院は「その人がその人らしい生活を続けていく」という考え方を治療に入れ、院内を家庭の集合体に近づけている。

 看護師、医師ら全職員が力を合わせ、今後も認知症の人の暮らしを大切にしたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年09月09日 更新)

タグ: 脳・神経健康介護高齢者福祉

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