岡山医師研修支援機構 青山興司副理事長に聞く 6月で発足5年目 若手と医療機関つなぐ 中四国Uターンも視野に
あおやま・こうじ 旧国立岡山病院小児外科医長、川崎医科大小児外科教授などを経て、2004年3月から10年3月まで国立病院機構岡山医療センター院長。現在、同センター名誉院長、旭川荘特別顧問。岡山大医学部卒。専門は小児外科。尾道市出身。67歳。
―岡山医師研修支援機構とは。
2006年6月にNPO法人としてスタートした。岡山大病院のほか、国立病院機構岡山医療センター(岡山市)、岡山済生会総合病院(同)、広島市民病院(広島市)、香川労災病院(丸亀市)、土庄中央病院(香川県土庄町)など、中四国の総合病院から診療所までが参加し立ち上げた。現在は約180施設が入っている。
―目的は。
04年4月に臨床研修制度が始まった。医学部を卒業し、医師免許を取得した若手医師を対象に、2年間の研修を義務付けたものだ。内科や救急などを経験しながら、専門に偏らない幅広い診断能力を身に付けさせるのが大きな目的だった。だが、研修が終わった3年目以降は公的な研修制度がなく、医師自らが専門分野を見定め、さらに研修ができる施設を探す必要があった。その負担を軽減し支援するためだ。
―具体的にはどんな活動なのか。
「マッチングプラザ」という面接会を毎年開いている。要は機構に参加する医療機関と研修先を探す若手医師の“お見合い”。各施設が一堂に会し、個別相談に応じていく。指導体制や治療実績、勤務待遇なども示し、パンフレット、スライドを用いて病院の概要説明も行う。若手医師にとっては多くの情報が一度に手に入るので、非常に有意義な場になったと思う。
―今年から対象を広げるそうだが。
昨年度までは2年間の初期研修を終え、翌年後期研修に入る医師が対象だった。今年からは、すでに各病院で働いている一般医師、後期研修が終了する医師、そして医学部6年生も参加できるようにした。一般医師、後期研修医で想定しているのは、県内在住者はもちろんだが、中四国地方の出身者で別の都道府県の医学部に進み、そのまま就職したケースや、中四国地方の大学を卒業後、別の都道府県で研修を行っている人など。医学部生にとっては、来春からの研修先を決めるよいきっかけになると思う。休日を利用して病院見学に行かなくても、ある程度の情報は把握できる。
―なぜ今、機構のような取り組みが必要なのか。
臨床研修制度の影響が大きい。自由に研修先を選べる制度下では、岡山を離れ、東京や大阪など都市部へ行った人も多かった。だが、そういう人たちが研修を終え地元に帰ってきたいと思っても、これまでは個人的なルートや民間のあっせん業者に頼むしかなかった。われわれのような公的な機関が支援することで、Uターンしやすくなるのではないかと思っている。
―医師の希望をかなえ、合わせて岡山を中心とした中四国地方の医療を充実させるという発想か。
岡山県内には二つの大学医学部があり、人口10万人当たりの医師数は264・1人(06年)と、全国の都道府県で8位。全国平均217・5人を上回っているものの、県北などは大幅に割り込んでいる。臨床研修制度で、人手が減った大学病院が地域に医師を派遣できなくなったこともある。医師をバランスよく充実させるためにはどうしたらいいか。その対策を考えた時、岡山医師研修支援機構という枠組みを活用し、地域一丸となって医師を育てていこうと思った。
―そのためには地域の魅力が不可欠だ。
私は、高度先進医療や救急、地域医療など、地方都市で岡山ほどレベルの高い医療ができる場所は珍しいと思っている。生涯の働き場として魅力に富んでいる。岡山に縁もゆかりもない人でも、良さをアピールすれば興味を持ってもらえるはずだ。また体制面も素晴らしい。これほど多くの病院が若手医師の育成という目的で参画し、地域医療向上のために活動している都道府県はない。中四国地方で働きたいという人の希望を実現させることで、地域の医療を充実させていきたい。
マッチングプラザ2010 23日、岡山 医学部生から一般まで
若手医師が医療機関側と面接し、研修先を決める「岡山マッチングプラザ2010」は、23日午前9時半から、岡山市北区駅元町の岡山コンベンションセンターで開かれる。
2部構成で、午前9時半から正午までは医学部生、正午から午後3時半までは研修医と一般医師が対象。岡山、広島、香川県などから約60の医療機関が出展する。
無料(昼食付き)。当日参加可。問い合わせは、同機構事務局(086―235―7043)。
(2010年05月17日 更新)