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第42回 吉備高原医療リハビリテーションセンター 機能回復治療 家庭、職場復帰を支援 自宅改造のシステム開発

自宅改造用のアニメーションを操作する「リハエンジニア」

訓練室で筋力アップを図る入院患者

 吉備高原都市の真ん中に位置する吉備高原医療リハビリテーションセンターは、リハビリ医療の専門病院だ。労働災害や交通、転落事故で全身、下半身まひなどの障害を負った人たちの機能回復を支援し、より良い社会生活を送ってもらうために力を注いでいる。

 最大の特長は、敷地内にある国立吉備高原職業リハビリテーションセンターとの連携。「当院は医療的なリハビリ、職業センターは職場復帰を目指した専門的な職業訓練を行う。役割を分担することで総合的なリハビリを行うことができるのが強み」と徳弘昭博院長。

 入院時に設定する「職場復帰」「家庭復帰」といった患者ごとの具体目標は、リハビリ期間の目安や内容などを含めて患者や家族らと話し合って決める。そして、個別メニューに沿ったリハビリが始まる。

 支えるスタッフは、リハビリ専門医が七人。徳弘院長もその一人だ。看護師六十四人に理学療法士七人、作業療法士は五人。古澤一成リハビリテーション科部長は「スタッフ一同、患者さんに明るく接するよう心がけており、安心して治療に専念できる体制を整えている」と説明する。

 理学療法を行う訓練室(三百六十六平方メートル)では連日、数十人の患者が、平行棒を使っての移動や、車いすを手でこぐロードランナーで体力強化などに取り組む。傍らの作業療法室では、食事やトイレ、入浴といった実生活での自立を目指した日常生活活動(ADL)訓練に励む人も。ここでリハビリをして社会復帰した後、障害者スポーツ選手として活躍する人もいる。

 手足のまひで、約一年前から入院している井丹翔さん(24)=鳥取県米子市=は一日三―四時間、車いすでの移動を含めた筋力トレーニングや自動車への乗り移りなどを行う。「同世代の人も多く、励まし合いながら訓練している。IT(情報技術)関連の仕事に就きたい」と意欲的だ。

 もう一つの特長が、治療に工学分野からアプローチするために設けた「医用工学研究室」。「リハエンジニア」と呼ぶ専門職員三人を配置する。

  褥瘡 ( じょくそう ) (床ずれ)の予防へ、座位や横になって寝た時の圧力を測定して、最適なマットレスをアドバイス。機能が低下した手でも操作がしやすいパソコン用マウスの開発なども手掛ける。

 患者が家庭復帰する際に必要な自宅改造の支援では、車いすに乗った患者の動きを三次元コンピューターグラフィックスのアニメーションで表示するシステムを開発。改造事例を収めたDVDの販売を昨年始めた。

 「アニメにすることで、改造後のイメージがつかみやすくなる」と徳弘院長。「今後も患者さんの社会復帰のために、全スタッフの力を結集して治療に当たっていく」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年02月16日 更新)

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