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第48回 岡山大病院③ 放射線科 がん治療の選択肢広げる

ラジオ波焼灼術の前にCT画像を確認する金澤教授

 さまざまな診療科を有する岡山大病院。がんの診断や治療の選択肢を広げる放射線科や、他の診療科とのチーム医療で乳がん患者の乳房再建術などを行う形成外科が実績を上げているほか、腎臓・糖尿病・内分泌内科は糖尿病治療を中心に据え、地域の医療機関とのネットワーク体制の構築を進めている。

  ◇   ◇

 放射線科では近年、悪性 腫瘍 ( しゅよう ) を治療する「ラジオ波 焼灼 ( しょうしゃく ) 術」に力を入れている。火がないのに料理が温まる電子レンジと同じ原理を活用し、肺や腎臓、肝臓などのがんに対して実施している。

 CT(コンピューター断層撮影)や超音波の画像を手がかりに、鉛筆の芯ほどの太さの針を患部に挿入。針からラジオ波電流を流して六〇―一〇〇度の熱を加え、がん細胞を 壊死 ( えし ) させる。

 高齢や心肺機能の低下など体力的な条件で手術が難しかったり、がんの再発で通常の放射線治療ができないケースに有効。治療時間は二時間前後で、特に問題がなければ一週間以内で退院できるという。

 岡山大病院では二〇〇一年六月から開始。肺と腎臓の悪性腫瘍のラジオ波治療は〇四年四月、一部に保険がきく「高度先進医療(現在の先進医療)」の承認を全国の医療施設で初めて受け、〇七年度の実績は肺がんが百二十六件、腎臓がんが二十四件。

 同科の金澤右教授は「症例数は世界でもトップレベル。直径二センチ以下の腫瘍であれば80%は再発しておらず、外科手術など他の治療法と比べてもそん色のない成績を維持している」と話す。

 CT一体型の放射線照射装置を活用し、がん細胞をピンポイントで狙い撃ちする「定位放射線治療」も昨年秋から始まった。保険適用されており、腫瘍の大きさが三―四センチの肺がん患者が対象だ。

 従来の放射線治療では、呼吸や体調などでがんの位置が動くことで誤差が生じやすく、周囲の正常組織にも被ばくが及ぶため少しずつ照射していた。だが、定位放射線治療は一度に四―五倍の線量を照射でき、治療も一―二週間で済むという。

 「自動車レースのF1と同様、優れたスタッフと機器がそろって初めて実現可能な治療」と金澤教授。機器などの高度な精度管理が不可欠なため、放射線科医や放射線技師、看護師の計十一人体制で実施している。

 金澤教授は「これら二つの治療は、画像診断による早期発見と正確なステージング(進行度分類)が不可欠。治療の選択肢が増えたことで、手術と合わせた治療の三本柱として発展させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年03月30日 更新)

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