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変わる臓器移植 3 岡山大病院の悲願 心臓も実施可能 / 執刀医の育成望む声も

悲願としてきた心臓移植実施施設に決まった岡山大病院

 「(心臓移植を実施するだけの)医療体制と技術が岡山大病院にはある」

 東京・霞が関の厚生労働省で7月5日に開かれた記者会見。移植関係学会合同委員会の高久史麿世話人(日本医学会長)が決定理由を述べた。

 移植を実施する医療機関を最終的に認定する権限を持つ同委員会。岡山大病院は「悲願」としてきた心臓移植の実施施設となることが決まった。臓器移植法改正によるドナー(臓器提供者)の増加を見込み、心臓移植関連学会協議会が新たな実施施設を公募。この日は、岡山大など3施設が選ばれ、国内で心臓移植を実施できるのは9施設となった。

 だが、同病院が心臓移植が行えるのは15歳以上の患者のみ。同時に申請していた15歳未満の小児については「施設としての経験がない」などの理由で見送られた。

 心臓血管外科教授として、心臓移植チームを指揮することになる佐野俊二副院長は「小児が認められず非常に残念。大人で経験を積み、数年のうちにもう一度申請したい」と意気込む。

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 決定を受け、岡山大病院は心臓移植チームの編成に着手した。専門の外科医や麻酔科医、術後管理を行う循環器内科医、看護師ら総勢50人に及ぶ。

 執刀は当面、ニュージーランドと豪州の病院で計6年間過ごした佐野副院長に、米国の大規模病院で経験を積んだ高垣昌巳助教の2人が担当。カナダやドイツで修行する30代の医師2人も数年のうちに帰国する予定で、海外で小児の移植経験がある助教1人を含めると計5人の陣容。「国内の他の実施施設と遜色(そんしょく)ない」(岡山大病院)という。

 拒絶反応や感染症の予防に重要な役割を果たす術後管理には、全国トップの実績を持つ肺移植チームと緊密に連携する。「外気に触れる肺の術後管理は難しい。彼らの存在は心強い」と佐野副院長。

 肺に肝臓、腎臓など生体、脳死移植で数多くの経験がある同病院の強みを生かし、将来は心肺同時移植の実施も視野に入れる。

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 1997年の臓器移植法施行以来、国内で行われた心臓移植(心肺同時含む)は70件。ドナー不足から、日本臓器移植ネットワークに登録した心臓移植希望患者の手術までの待機日数は平均2年4カ月。岡山大病院が中四国地方で初の実施施設となったことは、これまで大阪、東京などの施設へ入通院して移植を待つ中四国の患者の負担減にもつながる。

 一方、移植関係者からはさらに先の移植医療を見据えた要望の声があがる。

 改正法の施行で脳死ドナーが順調に増えれば、執刀医が不足することも考えられる。

 同ネットワーク西日本支部長補佐で、国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区)の田中信一郎移植センター長は「移植はまだまだ『特殊』な医療と思われているが、症例数が増えれば『普通』の医療となり、移植医を国内で育てる環境も整う」とした上で、「岡山大病院には移植医育成や研究拠点として体制を整え、臓器提供にも率先して役割を果たすことが求められる」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年07月19日 更新)

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