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変わる臓器移植 4 田中信一郎氏に聞く (岡山医療センター移植センター長) ドナー増どこまで / 提供意思 家族で確認を

たなか・しんいちろう 1983年、岡山大病院第一外科に入局。国立岡山病院(現・国立病院機構岡山医療センター)に赴任し、外科医長など歴任。2005年から移植センター長。岡山大医学部卒。呉市出身。61歳。

 改正臓器移植法の全面施行にあたって、国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区)移植センター長で、日本臓器移植ネットワークの田中信一郎・西日本支部長補佐に今後の移植医療について聞いた。

 ―事前に本人が拒否していなければ、家族の同意で脳死による臓器提供が可能になった。ドナー(臓器提供者)が大幅に増えるとの予測もある。

 「臓器提供には、健康なドナーが臓器の一部を提供する『生体』、心臓が完全に停止したドナーからの『心停止』、脳死判定を受けたドナーからの『脳死』の3種類がある。生体は肝臓や腎臓、膵(すい)臓、肺などが対象で、心停止は腎臓、角膜、膵臓など。脳死は心臓、小腸が加わる」

 「今回の法改正で脳死ドナーは増えるだろう。これまでも本人に提供の意思があり、家族の同意もあるが、法改正以前に脳死提供の条件だったドナーカード(臓器提供意思表示カード)が見つからないなどの理由で、脳死判定が実施できなかったケースがあったと聞く。そうした場合は法改正で移植が可能になるからだ。しかし、日本は欧米に比べて移植医療への関心が低く、臓器提供者の総数自体は大きく変わらないのではという懸念も持っている」

 ―15歳未満の子どもたちも臓器提供が認められることになった。

 「6月下旬に国が示した臓器移植法の運用に関する指針(ガイドライン)は、虐待を受けた子どもからの提供をなくすため脳死判定を行う臓器提供施設には虐待防止委員会という専門的な組織の設置や児童虐待への対応マニュアルの整備を定めている。指針の通知が施行の直前になったため、岡山県内で公表している臓器提供施設10病院の大半が準備段階で、体制は整っていないようだ。虐待児を見分けるチェックリストもあるが、実際の現場での判断は迷うケースも出てくるだろう。小児に関しては法が先行し、環境が整うにはしばらく時間が必要だ」

 ―ドナーカードも新しくなった。

 「臓器提供は『提供しても良い人から、提供を望む人』へ、善意に基づいて行われるものだ。今回の法改正で、ドナーカードの所持は臓器提供の条件ではなくなったが、『提供したくない人』が自らの意思を示すツールでもある。今後、発行される健康保険証や運転免許証の裏面にも、ドナーカードと同じ文面が記載されることになっている。臓器提供や移植について、自分の意思を尊重してもらえるよう、よく考えて記入してほしい」

 ―法改正や移植への関心が低いという調査もある。

 「県が昨夏から今春にかけて実施した県民意識調査によると『法改正を知らない』と答えた人は65・5%に上る一方、『自分の意思を家族に伝えている』は23・6%どまり。『提供しない』と事前に表明しない限り、だれでもドナーになる可能性は残される。しかし、提供か否かの判断が家族に委ねられることになると、家族の精神的な負担は小さくない。年月がたつと考え方が変わることもある。1年に1度は家族で臓器提供について話し合い、自分なりの考えを伝えておくことが重要だ」

おわり
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年07月20日 更新)

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