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改正臓器移植法施行1ヵ月 岡山も環境整備進む 「心臓」実施へチーム編成 小児提供備えマニュアル

改正臓器移植法の施行後、初めて行われた脳死肺移植手術=10日、岡山大病院

 本人の事前拒否がなければ、家族の承諾で脳死臓器提供を可能にするなどした改正臓器移植法の全面施行から17日で1カ月。9日には家族承諾による初の脳死ドナー(臓器提供者)が現れ、岡山大病院(岡山市北区)では中国地方の20代男性に肺移植が行われ、無事成功した。改正を機に心臓移植の実施施設になった同病院は既に移植チームを編成、初の心臓移植に向けた環境づくりも進む。一方の臓器を提供する側の病院でも体制整備が急がれている。岡山県内の移植医療の現場を追った。

 「世間の注目を集める1例目。難しい決断をされたド
ナーの家族のためにも失敗は許されなかった。次につながる成果でほっとしている」

 岡山大病院で10日にあった記者会見。法改正後、初の脳死肺移植を執刀した大藤(おおとう)剛宏肺移植チーフは、今後の移植医療の行方を左右しかねない今回の手術の意義を語った。

 ドナーは関東地方の病院で脳死状態になった20代男性。移植関連のテレビ番組を見た際に「万一の時は臓器提供して」と家族に伝えていたとされ、本人による書面の意思表示なしで提供に至った。

 大藤チーフは「誰もが移植が必要な患者になる可能性があり、移植医療は遠い世界の話ではない。もっと多くの人に関心を持ってほしい」と会見で結んだ。

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 法改正による脳死ドナー増を見込み、心臓移植を行う病院は全国6カ所から9カ所に増やされた。岡山大病院も新たに認定された施設の一つで、15歳以上の患者に心臓移植が可能になった。

 海外で技術を身に付け執刀医を務める心臓血管外科の佐野俊二教授、高垣昌巳助教を中心とした総勢50人の移植チームを既に編成。患者のケアや院内調整を行う院内コーディネーターは、肝臓移植で経験豊富な看護師・保田裕子さんが兼務することで準備を整えた。

 同病院によると現在、心臓移植を希望する待機患者はいないが、9月下旬から10月上旬に実施手順を確認するシミュレーションを行う予定だ。循環器内科医らでつくる作業班が実施方法などを検討中で、実績のある大阪大病院の医師を招き、指導を仰ぐことも計画。佐野教授は「われわれが知っているのは欧米での手順。国内の手続きの流れに合わせたい」とする。

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 提供要件の大幅緩和で、臓器提供病院の果たす役割も大きくなった。

 県内の提供病院は12カ所。だが、多くの病院は18歳未満の脳死判定を行える状況にない。国は、虐待児からの臓器提供を防ぐため6月下旬、改正法運用に関する指針で「虐待防止委員会」の設置などを通知。その対応が追いつかず、各病院は体制構築を急いでいる。

 臓器提供病院でもある岡山大病院は、9月下旬にも医師や看護師ら100人の関係者を集め、救急医や小児科医らでつくる虐待防止委員会の招集など臓器提供に至るまでの手順を確認し、実践に備える。

 国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区)も、小児からの臓器提供にも対応できる包括的なマニュアルづくりに着手しており、「10月までには体制を整えたい」と田中信一郎移植センター長。倉敷中央病院(倉敷市)、川崎医科大付属病院(同)など他の施設でも準備が進む。


 改正臓器移植法 脳死ドナー増を目指し2009年7月に成立、今年7月17日に全面施行された。改正前は15歳未満の臓器提供を禁止していた年齢制限を撤廃し、本人の事前拒否がなければ家族の承諾で提供できるなど要件を大幅に緩和した。提供者が18歳未満の場合、臓器提供病院の「虐待防止委員会」で虐待の有無を確認し、疑いがあれば提供できない。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年08月16日 更新)

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