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承諾脳死肺移植が無事終了 岡山大病院 ドナー増で執刀医「医師の育成必要」

脳死肺移植を終えて会見する大藤肺移植チーフ=5日午前1時半すぎ、岡山大病院

手術を前に心境などを語る男性患者(手前)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で4日夜から行われた北海道在住の20代男性患者への脳死肺移植手術は5日未明、無事終了した。病院側によると、患者の容体は安定しており、早ければ1カ月で退院できるという。

 日本臓器移植ネットワークによると、東北地方の病院で脳死と判定されドナー(臓器提供者)となった成人男性本人の提供の意思は不明だったが、家族が脳死判定と提供を承諾した。

 7月17日に全面施行された改正臓器移植法に基づく「本人意思不明」の6例目。改正法施行後、岡山大病院での脳死肺移植は2例目で、1例目(8月10日)から1カ月足らずでの実施となった。

 脳死ドナーが増えていることについて、術後に会見した同病院の執刀医の大藤剛宏肺移植チーフは「1例目となったドナー家族のご決断があったからこそ関心が高まった。臓器提供は今後も増えるだろう。移植医の育成、移植医療をサポートする病院や国の体制強化が必要だ」と強調した。

 同病院によると、ドナーから摘出された右肺はチャーター機で岡山空港に運ばれ、4日午後9時ごろ同病院に到着。患者の手術は肺の到着に先行して同8時51分に始まり、5日午前1時8分に終了した。

 患者は気管支が細くなり、呼吸困難になる閉塞(へいそく)性細気管支炎と診断され、2008年に日本臓器移植ネットワークに登録していた。


男性患者「生きる勇気がわいた」


 岡山大病院で脳死肺移植を受けた男性患者が手術前に取材に応じ、治療への期待、ドナーやその家族への思いを語った。主なやりとりは次の通り。

 ―移植を待ち続けた心境は。

 「(順番が)いつ来るだろう」という一心で治療を受けてきた。希望を持ち続けて良かった。今は(手術を前に)不安だらけだけど、自分が良くなることを考えて頑張ろうと思う。

 ―改正臓器移植法の施行で、移植の機会が巡ってくることへの期待はあったか。

 施行直後は実感がなかったが、8月に1例目が出て期待が膨らんだ。臓器提供を受ける立場でしか言えないが、これからも提供を受けられる人が増えるのは良いことだと思う。

 ―ドナーやその家族に対する思いは。

 感謝の一言。言葉では言い表せない。生きる勇気がわいた。(提供してくれる気持ちに応えるためにも)自分は頑張るしかないと思っている。

 ―手術が成功し退院したら何をしたいか。

 普通に散歩したりして生活したい。(酸素吸入などの)機械をずっと付けたままで行動の制限も多かったから。早く良くなって家族に報告したい。

 ―今回取材に応じた理由は。

 自分も移植手術の報道を見て、チャンスが来るんじゃないかと思えた。同じような病気で移植を待っている人はいっぱいいる。(自分が報道されることで)希望を持ってもらえたらと思う。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月06日 更新)

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