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多剤耐性菌、新耐性菌 検査徹底に躍起 岡山県内の病院

多剤耐性アシネトバクター菌などへの対策を話し合った岡山市立市民病院の緊急幹部会議

 帝京大病院や独協医大病院で、ほとんどの抗生薬が効かない多剤耐性菌や新たな耐性菌が検出されている問題は、岡山県内の医療機関にも波紋を広げている。各機関とも院内感染を制御するインフェクションコントロールチーム(ICT)による監視や検査の徹底など対策に努めるが、菌に関する情報が十分でなく、国の迅速な対応を求める声も上がっている。

 「決して人ごとではない。感染がいつ起きても対応できるよう準備を万全にしたい」

 7日夕、緊急対策会議を開いた岡山市立市民病院(岡山市北区)の松本健五院長は会議の後、真剣な表情で語った。

 会議では、帝京大病院での多剤耐性アシネトバクター菌の集団感染、独協医大でインドからの帰国者から見つかった新たな菌などへの対応について、病院幹部ら10人が協議。外部研究会に参加し情報収集を図るほか、ICTによる病棟巡回を徹底することなどを申し合わせた。

 アシネトバクター菌に効く可能性があると海外で報告された「コリスチン」を10日分備蓄する川崎医科大付属病院(倉敷市)。院内感染対策室の寺田喜平・同大教授は「県内の数病院が備蓄しており、万が一の時には融通し合えれば」とする。

 同室では感染対策ニュースを年5回発行しており、次回は多剤耐性菌について掲載する。「スタッフに周知するためにも、国や学会は早く詳しい情報を出してほしい」と要望する。

 倉敷中央病院(倉敷市)も6日、院内感染対策委員会とICT委員会の合同会議を開催。検査室で菌が検出された場合、速やかに関係部署へ報告し、患者を個室に隔離するなどの対応を決めた。

 津山中央病院(津山市)や岡山赤十字病院(岡山市北区)も院内感染の制御体制を再確認。スタッフに手洗いや消毒の徹底を呼び掛ける方針。

 感染対策専門医の資格を持つ光生病院(岡山市北区)の吉本静雄副院長によると、アシネトバクター菌は2000年ごろから欧米などで急増。「今回の事例をみれば、国内でもかなり広がっている可能性がある。医療機関は規模にかかわらず、感染が疑われる患者のチェック体制を確立、強化し、院内や行政との連絡を密にすべき」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月08日 更新)

タグ: 感染症

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