大腸がん検査法改良「定期的な検診が重要」 松岡良明賞受賞・チクバ病院長 瀧上隆夫氏に聞く
たきうえ・たかお 1978年、岡山大医学部卒。同年からチクバ外科・胃腸科・肛門科病院(当時は医院)に勤務。82年に渡米、活躍していた新谷弘実医師の下で8カ月間研修した。2000年から現職。倉敷市玉島乙島。58歳。
―大腸がん、胃がんの早期発見に大切なことは。
「大腸がん、胃がんとも初期のうちは自覚症状が出にくい。定期的な健康診断での検査が重要だ。胃の検査は多くの人が受けているが、大腸がんやポリープを発見する検便による検診受診率は2割弱。5割の人が受ければ、大腸がん患者が半減するともいわれるだけに、受診率の向上が課題となっている」
―日常生活の中で注意すべき症状は。
「お尻からの出血は、軽くても検査を受けてほしい。40歳代で一度だけお尻から真っ赤な血が出たという、専門医でも痔(じ)だと考える患者が、内視鏡検査でS状結腸がんが見つかったケースもある。痔を長年患っている人だと、がんによる出血や排便異常に気付きにくい。気後れが手遅れを招かないよう、ぜひ検査を。当院では年間1200人程度に痔の手術をしているが、それ以外の疾患による出血も考慮し、手術前に内視鏡検査を行う」
―1983年から取り入れている「短時間で苦痛が少ない大腸内視鏡検査法」とは。
「かつて、大腸内視鏡検査は医師2人がかりで1〜2時間が必要だった。しかも、大腸の形に沿って内視鏡を進めていたため、約1・5メートルの大腸全体は観察できない。苦痛を和らげる鎮静剤も使わず、医師、患者とも敬遠する検査だった。これを変えたのが、米国で活躍していた新谷弘実医師が開発した検査法。大腸をアコーディオンのように折りたたみながら内視鏡を進めることで、全体を5〜10分で観察できるようになった」
―若手にエールを。
「食生活の欧米化などで大腸がんや炎症性腸疾患は増え、消化器に携わる医師にとって大腸内視鏡検査は必須となった。診断、治療は常に進歩している。目を凝らして日々の精進を。私も受賞を機に、原点に返って医療の道を歩みたい」
(2010年09月20日 更新)
タグ:
がん、 消化器・肝臓・胆嚢・膵臓・おしり