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がんウイルス治療 国内初の臨床試験へ 岡山大病院 藤原助教授ら、今夏にも米で 実用化に一歩

藤原俊義助教授

がん細胞内で増殖するテロメライシン

 岡山大病院(岡山市鹿田町)の遺伝子・細胞治療センターの藤原俊義助教授らのグループは、がん細胞だけを死滅させるウイルスを使った臨床試験を今夏にも米国で始める。試験管レベルでの実験では肺、胃がんなどに加え、決定的な治療薬がないとされる中皮腫のがん細胞の縮小に成功。ヒトでの効果が実証されれば、新たながんウイルス治療の実用化に向け大きな一歩となる。

 がんのウイルス治療は、抗がん剤に比べ少量で高い効果が見込まれる上、副作用も軽い。世界中の研究者が治療薬の開発にしのぎを削っているが日本は出遅れており、臨床試験は国内初という。

 使用するのは、藤原助教授や岡山大大学院医歯薬学総合研究科の田中紀章教授らが二〇〇二年に開発した「テロメライシン」。アデノウイルス(風邪ウイルスの一種)と、細胞ががん化したときだけ活性化する遺伝子テロメラーゼの一部を結合した。

 ヒトのがん細胞に注入すると、一日で十万~百万倍に増殖し細胞を破壊。正常細胞では百倍程度にしか増えず、細胞は損なわれない仕組み。

 臨床試験では、米国テキサス州ダラスの病院で頭頸(けい)部、肺、乳、食道がんなどの患者約二十人に投与。発熱や下痢といった副作用、がん細胞の縮小などを調べる。

 岡山大発ベンチャー企業のオンコリスバイオファーマ(東京都港区、浦田泰生社長)がウイルスを製造し、三月に米食品医薬品局(FDA)に試験実施を申請する。〇六年中には岡山大にも申請する予定。

 藤原助教授は「米国はがんのウイルス治療ではトップレベル。われわれのウイルスの有効性が確認できれば日本の技術が世界に通用することを証明できる」としている。


非常に意義ある

 国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部・山口照英部長(バイオ医薬品)の話 純国産技術により開発した治療薬の臨床試験は非常に意義がある。有効性は試験結果を待たなければならないが、世界的にも実用化には至っておらず注目したい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年01月06日 更新)

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