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岡山済生会総合病院 三村哲重副院長 目立つ前立腺、肺、肝臓がん 早期発見で体の負担軽く

三村哲重副院長

 日本人の2人に1人が一度は患うがん。免疫力の低下など老化に伴う病とされ、患者の多くは高齢者だ。「がんイコール死と思われがちだが、今や高齢患者も半分は治る。『年だから』とあきらめる時代でない」と語る岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)の三村哲重副院長に、高齢者のがんの特徴や治療法について聞いた。

特  徴

 同病院が2008年までの5年間に診断した主ながんのうち、70歳以上の患者が半数を超えていたのは前立腺、肺、肝臓、胃がん=表参照。

 特に「肺、前立腺と、患者は少ないが膵臓(すいぞう)がんは高齢者の増加が目立つ」と三村副院長。高齢者はがんの進行が遅いといわれるが、「それは間違い。若い人と同じように進行する」ときっぱり。

 ただ、高齢者の特徴もある。甲状腺がんは治しやすいがんの一つとされるが、高齢者は難治性のタイプが少なくない。

 一方、三村副院長が専門の膵臓がんでは、若い人には珍しい「膵管内乳頭粘液性腫瘍(しゅよう)」が比較的多い。一般的な「浸潤性膵管腫瘍」に比べ、周辺のリンパ節、神経、肝臓などへの浸潤・転移や、がんがおなかの中で広がる腹膜播種(はしゅ)が少ない。手術でも神経などを切らずに済み、下痢による栄養障害を伴わず、完治を目指せるという。

治  療

 三村副院長が「『年だから』とあきらめる時代でない」と言うのは、体の負担が軽く高齢でも可能な治療が近年広まったためだ。

 口、肛門(こうもん)から内視鏡を入れ病巣を切る胃、大腸がんの内視鏡治療、体を大きく切らない肺、胃、大腸がんの胸腔(くう)鏡、腹腔鏡手術…。針を刺しがんを焼く肝臓、肺がんのラジオ波治療、注射と飲み薬による前立腺がんのホルモン治療などもある。放射線治療も普及し、年齢に応じ手術、抗がん剤と組み合わせる集学的治療が可能になった。

 抗がん剤治療も年齢、体力に応じ投与量を調節する。三村副院長は手術が難しい膵臓の進行がんで、通常なら週1回の投与を3週続け1週休む治療を、高齢者は隔週に減らすこともある。「通常に比べ治療効果は下がるが、副作用は軽く、3年以上生存する患者もいる」と言う。

検  診

 体の負担が軽い治療を行うには、病の早期発見が欠かせない。例えば、肝臓がんのラジオ波治療は直径3センチの病巣が3個以下の場合に限られる。これより進むと手術や抗がん剤治療を行うが、治療の選択肢は狭くなる。

 早期発見に必要なのが検診。国立がん研究センターは科学的根拠のある検診として肺のエックス線、喀痰(かくたん)や胃のエックス線、大腸の便潜血、内視鏡検査などを挙げ、それぞれ40歳以上は年1回受けるよう勧めている。

 さらに、三村副院長は「膵臓がんは喫煙歴があったり、肉親が過去に患った人、糖尿病患者のリスクが高い。複数の危険因子を持つ人は、超音波や血液を調べる腫瘍マーカー検査を1年に1回、医師と相談し受けてほしい」と呼び掛け。前立腺がんについても年1回のマーカー検査を勧めている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年10月04日 更新)

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