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難治性てんかん食事療法 脂肪摂取の有効性解明 森山・岡山大大学院教授ら

森山芳則教授

 薬が効かない難治性てんかん患者に対して脂肪分を多く摂取させる食事療法が有効である仕組みを、岡山大大学院の森山芳則教授(生化学)らのグループが初めて解明した。脂肪の分解時に出る物質「ケトン体」が特定のタンパク質に作用し、てんかん発作を引き起こす脳内の神経伝達物質の過剰な分泌を抑えることを発見。新薬の開発にもつながる成果として、6日付の米科学誌ニューロン(電子版)に発表した。

 てんかん発作は、飢餓状態になると起きにくいことが古くから知られていた。飢餓状態の体内で増えるケトン体が何らかの働きをしていると考えられ、全患者の2〜3割を占める難治性患者には、脂肪分を多く摂ってケトン体を増やすケトン食療法が行われている。

 森山教授らは、興奮を引き起こす神経伝達物質のグルタミン酸を運ぶタンパク質・トランスポーターを研究する過程で、トランスポーターが機能するために“スイッチ”を入れる物質があることを突き止めた。

 約100種類の関連物質を調べた結果、体内に存在する塩素イオンがトランスポーターと結合するとスイッチが入り、グルタミン酸を分泌。一方、ケトン体が結びつくと、そうした働きを阻害することが判明した。

 ラットの動物実験でも、脳内のケトン体を30倍近く増やしたところ、グルタミン酸の分泌が抑制され、てんかん発作が起きないことを確認した。

 森山教授は「グルタミン酸トランスポーターの構造をさらに研究し、ケトン体の働きを強めた化合物を見つければ難治性てんかんにも有効な薬が開発されるだろう」と話している。

 金井好克大阪大大学院教授(薬理学)の話 てんかんのほか、アルツハイマーや疼痛(とうつう)など興奮系の神経伝達がかかわる病気の治療薬開発につながる発見。トランスポーターの機能における塩素イオンの役割を証明したことも、神経化学分野の発展に大きな意義がある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年10月07日 更新)

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