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川崎学園40年の挑戦 (下) 地域医療 「24時間いつでも」実践

川崎医科大付属病院の高度救命救急センターで処置する医師。幅広い救急患者を受け入れる

 10月中旬の正午すぎ、川崎医科大付属病院(倉敷市松島)の高度救命救急センターに、ドクターヘリで県北から男性が運び込まれてきた。

 自宅で農機具の整備中に右手を挟まれ、指3本を切断。搬送されると、医師、看護師らが連携して素早く処置し、約2時間で接合手術を受けることができた。

 県内初の救命救急センターとして1979年に設立され、重傷者などに対処してきた。94年には広範囲のやけど、重度の薬物中毒といった、より高度な知識が必要な患者に対応するため、専門性の高い高度救命救急センターに発展させた。

 一方で、歩いて来院できる初期救急患者も診察。「うちのセンターで受け入れられない患者はいない」と鈴木幸一郎同センター長が言う通り、年間2万5千人を超える診療実績は中四国地方でトップクラスだ。

基幹病院として

 川崎学園が運営する付属病院は、同学園創立者の故川崎祐宣初代病院長が掲げた「24時間、いつでも診療」という信条を実践する場。高度救命救急センターは、その象徴として位置付けられる。

 救急医2人のほか、整形外科、産婦人科などの専門医9人ら医師計17人が毎日当直。医師不足が叫ばれる小児科医2人も常時待機し、小児救急の時間外診療に当たっている。

 付属病院の診療体制も変えた。新築・改築に伴い、診療科単位の病棟・外来構成を、臓器・機能別にグループ分けしたセンター方式に移行。患者をより多面的に診断する体制を整えた。角田司病院長は「いつでも、どのような症状の患者にも最適な診療が行えるようにすることが、地域の基幹病院としての役割」と話す。

厳しさ増す環境

 ただ、病院や大学、短大を取りまく環境は近年、厳しさを増している。

 患者の満足度を高めようとするほど、人材の確保、施設整備に多額の投資が必要になる。半面、少子化の進展で医療福祉大と医療短大の志願者数は年々、減少傾向にある。

 疾病構造や医療の在り方も目まぐるしく変化している。治療に対する十分な説明や情報の共有化など、患者の権利も守らねばならない。

 こうした状況の中、キーワードに挙げるのが「教育の充実」。優秀な人材を育て、送り出すという、学園創立の原点に立ち返ることが重要との考えだ。

 「地域の医療、福祉を向上させるため、学園にどのような貢献ができるのか。常に模索しながら、地域に必要な存在であり続けるための挑戦を続けたい」。川崎誠治副理事長は抱負を語った。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年10月24日 更新)

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