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医療従事者のワクチン接種進まず 県内、供給不十分で15%程度に

ワクチン接種を受ける医療従事者。高齢者接種の本格化に向けて接種のスピードアップが課題だ=3月8日、岡山市立市民病院(画像の一部を加工しています)

 岡山県内で2月に始まった医療従事者への新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいない。国からのワクチン供給が十分でないためで、2回の接種を完了したのは15日現在、約1万2千人と対象者約8万1千人の15%程度にとどまる。施設入所者以外の高齢者に対する県内一斉の接種開始(5月17日)が1カ月後に迫る中、主な担い手となる診療所の医師への接種は未着手の状況で、スピードアップが課題となっている。

 医療従事者への接種に向けて、県は10日間で千人以上の接種に対応できる「基本型施設」に大規模病院など21の医療施設を選定し、ワクチン保管用の超低温冷凍庫を配備。さらに基本型施設からワクチンの供給を受け、5日間で100人以上に接種可能な「連携型施設」として約100の医療施設を確保した。

 これらの施設ではスタッフへの接種を自前で行っており、診療所の医師らはいずれかに赴いて接種を受けることになっている。

 県内での医療従事者への接種は2月17日にスタート。ワクチンの不足を踏まえ、主に大規模病院でコロナ診療に携わる従事者を対象に進めている。県によると、医療従事者向けには3月末までに約2万3千人分(2回接種で換算)が順次配分されたが、各施設とも通常診療をこなしながらの接種とあって1日の接種数には限りもあり、今月15日までに1回目が済んだのは約1万8千人、このうち2回目も終えたのは約1万2千人にとどまる。

 それでも5月中旬には医療従事者向けのワクチンが全量を確保される見通しとなり、県は今月21日から診療所の医師らにも接種の対象を広げることを決定、接種施設では12日から順次予約を受け付けている。

 ただ、施設入所者以外の高齢者への接種開始が迫り、診療所の医師らからは不安の声が上がる。「接種を担うつもりだが、自分が接種を希望する施設ではまだ予約すら受け付けておらず、間に合うかどうか…」と岡山市北区にあるクリニックの院長は言う。

 接種に関わる医療従事者は感染防止のため自らも接種を受けておくことが求められるが、ファイザー製ワクチンは1回目と2回目を3週間空けて行う必要があり、5月17日の接種開始に間に合わせるには、遅くとも今月26日までに1回目を終えないといけない。

 一方、接種施設では自院のスタッフへの接種を含めて準備が追い付いていない所も多い。接種施設の一つである佐藤病院(同市南区築港栄町)の担当者は「約80人の職員の接種に加え、通常診療もある。外部から1日に20~30人の接種を受け入れる計画だが、予定通りに進むかどうかは分からない」と話す。

 県には接種を受ける見通しが立たない診療所の医師らから問い合わせが相次いでおり、今後、接種施設に予約枠の増加などを求める方針。県保健福祉部の根石憲司・新型コロナ感染症対策監は「2回の接種に必要な期間を考えると、この2週間弱が勝負。混乱を招かぬよう接種施設と調整を急ぎたい」としている。

 県内の高齢者接種の対象者は約56万人。県ではこのうち約5万人の施設入所者を優先して今月12日から実施している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年04月16日 更新)

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