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悪性中皮腫の新遺伝子治療 臨床研究を申請 岡山大病院に豊岡助教グループ

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)呼吸器外科の豊岡伸一助教らの研究グループは3日、アスベスト(石綿)が主な原因とされる、胸にできる悪性中皮腫に対する新しい遺伝子治療の臨床研究計画を同病院に申請した。がん細胞を自滅(アポトーシス)させるがん抑制遺伝子「REIC(レイク)」を活用した治療の安全性や有効性などをヒトで検証する。学内での承認後、国に申請し、2011年半ば以降の開始を目指す。

 REICは2000年に岡山大が発見。幅広い種類のがん細胞を自滅させるうえ、がんに対する免疫力も活性化させる効果がマウスを使った実験などで分かっている。正常な細胞にはほとんど影響しないという。

 計画では、外科手術などが受けられない患者18〜30人の胸腔(きょうくう)内か胸膜上の患部に、運び役となる「アデノウイルス」とREICを組み合わせた薬剤数十CCを注入する。夏かぜの原因であるアデノウイルスによる副作用を調べるため、薬剤に含むウイルス量を300億個から1千億個、1兆個などと増やしながら計5段階で投与。最適なウイルス量や腫瘍(しゅよう)の縮小などの効果を調べる。

 マウス実験では治療した5匹中4匹で腫瘍がほとんど消滅。残り1匹も大幅に縮小したという。

 この日、豊岡助教や公文裕巳遺伝子・細胞治療センター長らが会見。「悪性中皮腫は有効な治療法がほとんどなく、新しい治療法の開発は国家的な課題。一刻も早く臨床現場で使えるよう努めたい」などと述べた。

 REICを活用した遺伝子治療は、前立腺がんに対する研究が先行している。岡山大発のベンチャー企業「桃太郎源」(岡山市北区津島中)が12月中にも米国で前立腺がん患者の薬剤投与に着手。中国でも研究用製剤の開発に取り組んでいる。国内では、岡山大病院が国の承認を経て、来年2月ごろに臨床研究を始める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月04日 更新)

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