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子宮頸がん予防ワクチン接種1年 上村茂仁医師に聞く 日本思春期学会HPV 緊急プロジェクトオブザーバー

 かみむら・しげひと 川崎医科大、岡山大大学院卒。医学博士。2004年、岡山市内に「ウィメンズクリニック・かみむら」を開設。性教育をテーマに、小中高校で講演活動を行っているほか、若者からのメール相談にも応じている。高知市生まれ。

 子宮頸(けい)がんの予防ワクチン接種が始まり、およそ1年。県内でも自治体の費用助成制度の導入などを背景に普及が進められている。唯一の感染経路が性交渉であることから、子どもたちへの知識啓発の在り方などについて、日本思春期学会HPV(ヒトパピローマウイルス)緊急プロジェクトオブザーバーで岡山市内に女性総合診療所を開く産婦人科医の上村茂仁さん(51)に聞いた。

 普及へ共通認識を 正しい知識啓発は大人の責任

 ―子宮頸がんとは。

 子宮の入り口にできるがん。粘膜に付着したHPVが原因とされる。HPVは皮膚などの表面について伝搬し、性行為によって子宮の入り口まで運ばれる。性交経験のある女性の約80%が一生に1度は感染するといわれ、発症すれば子宮摘出や死に至る恐れもある。ただ早期発見で治療が可能で、感染者の約9割は自然に陰性化し、がんになることはない。

 ―感染防止へ予防ワクチンの必要性が高まっている。

 HPVにもさまざなタイプがあり、子宮頸がんの原因の約7割を占め最も多いのが16、18型のウイルス。この2種類の感染を防ぐのがワクチン。昨年12月に接種が始まり、3回に分けて注射し、体内に抗体をつくる。ワクチンにウイルス遺伝子は組み込まれておらず、無害だ。

 ―10代前半での接種が進められているが、20代以上では効果がないのか。

 予防ワクチンには感染者のウイルスを消したり、治したりする効果はない。1度感染して陰性化した人の再感染を防ぐ効果があるかどうかも現段階では確認されていない。つまり、1度目の感染を防ぐことが重要で、性行為を経験する前の接種が進められる理由だ。性交経験があっても効果は期待できるが、経験前の予防率約7割に対し、経験者は約5割に下がるというデータがある。

 ―ワクチンの普及には子どもたちへの正しい知識啓発が必要だ。

 なぜワクチンを打つのかを子どもたちに伝えるのは大人の責任。感染経路が性行為である以上、性教育と切り離せないが、取り組みは十分とは言えない。中学校では「妊娠」を教えるのに「性交」は教えない。一方でインターネットや少女向け雑誌には性の情報があふれ、子どもたちの知識は豊富。ここに危険が潜んでいるわけで、正しい知識を教えていないがために子どもたちは自分に都合のいい情報だけを信じてしまう。実際、「HPVワクチンを打てば妊娠しない」といったうわさも出回っている。

 ―どのような取り組みが望まれるか。

 学校では、学習指導要領にないことは教えられないとの声があるのも事実。だが、医師ら外部講師を招いたり、地域独自のカリキュラムを組んだりすることで乗り越えられるのではないか。ワクチン普及を好機と捉え、性教育の在り方そのものを見直してほしい。行政や学校、保護者、医療従事者が共通認識を持って取り組むことが第一歩になるだろう。

 子宮頸(けい)がんの予防ワクチン接種が始まり、およそ1年。県内でも自治体の費用助成制度の導入などを背景に普及が進められている。唯一の感染経路が性交渉であることから、子どもたちへの知識啓発の在り方などについて、日本思春期学会HPV(ヒトパピローマウイルス)緊急プロジェクトオブザーバーで岡山市内に女性総合診療所を開く産婦人科医の上村茂仁さん(51)に聞いた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月09日 更新)

タグ: がん健康お産

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